内容説明
人間は誰しも、心のどこかで“理想の人生”を願っている。早逝した父との大連での日々、かつて憧れた美少女の訃報、死の直前に信仰を失った母の姿…。逝きし人々を静かに見つめ、人生の真実を描く感動の自伝的連作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
90
あとがきにあった「もう二度と会えない人たち」との思い出を綴った短編集。早逝したお父さんのこと、最期まで自由だったお母さんのこと、初恋の人、友だち。亡くなった人たちとの日々がすぐそこにあるように描かれる。著者の思い出話を聴いているような読み心地。お父さんとお母さんの話が好きだった。小説なのだから全てが真実ではないだろうが、特別なことが起こるわけでもなく、人が生きて死んでいくことが、川の流れのように自然だと感じられる。面白い小説ではないが、こんな文学もあるのだなと思う。若かったら最後までは読まなかったな。2020/05/19