出版社内容情報
「地域に根ざした保健実践」の象徴として知られる駐在保健婦制度。本書は、高知県駐在保健婦を祖母にもつ若き歴史・民俗学者が成し遂げた圧倒的なオーラル・ヒストリーである。保健婦というユニークな存在に注目することによって「権力vs.民衆」という旧来の歴史図式に風穴を開けるとともに、専門誌や手記などの見過ごされがちな文書資料と、共感あふれる聞き書きによって、「地域をまるごと支えた人たち」の姿を今に蘇らせる。
内容説明
地域をまるごと支えた人たちの姿が蘇る。若き歴史・民俗学者による圧倒的なオーラルヒストリー。
目次
第1章 総力戦と県保健婦の市町村駐在
第2章 戦後改革と保健婦駐在制の継承
第3章 保健婦駐在活動の概況―高知県駐在保健婦経験者の聞き書きから(その1)
第4章 保健婦駐在活動の展開―高知県駐在保健婦経験者の聞き書きから(その2)
第5章 沖縄における公看駐在制―保健婦駐在制の関係史(その1)
第6章 青森県における保健婦派遣制―保健婦駐在制の関係史(その2)
第7章 「高知方式」の定着と全国への波及―保健婦駐在制の関係史(その3)
第8章 保健婦駐在制廃止をめぐる動向
著者等紹介
木村哲也[キムラテツヤ]
1971年高知県生まれ。祖母が高知県駐在保健婦経験者。神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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せい
1
「駐在保健婦」という歴史に埋もれた存在にスポットライトを当て、創設の歴史的経緯やその実態を検証したもの。民俗学者がこうしたテーマを分析するという分野横断的な視点が面白かった。特に青森県の例は地域の実情から出発したボトムアップ型の運用がなされていたことに驚いた。また、国の方針転換によって、地域特性にあわせて独自に進化する可能性を持っていたであろう制度が簡単に消失してしまったというところにショックを受けた。チラッと出てきた無医村を支えた外国籍医師達の話も気になるので、こうした分野の研究が更に進むことに期待。2020/05/03
カステイラ
1
駐在保健婦はもうこの世に存在しない職業で、この本に出会うまでこの職業が存在したこと自体を知らなかった。聞き書きから伝わる生の声を読みながら、未だ古くからの因習に囚われていた人々に公衆衛生の考えを浸透させ、今では当たり前の生活様式を作ったのは彼女たちの努力があったことを理解し、忘れてはいけないと感じた。これだけボリューム満点かつ内容が濃厚に仕上げられたのは著者が駐在保健婦の祖母をもった立場だったことが大きく、著者以外の研究者がこの手の本を書いたら内容が薄まっていたと思う。2018/03/14
Naoya Sugitani
1
駐在保健婦という戦後期に活躍したバイク乗りの母ちゃんたちの活動を描いた一冊。なかなかこういうミクロで濃密な研究はない。研究というより、ドキュメンタリーを読んでいるような気持になる。2017/08/10
takao
0
ふむ2017/11/10
Ayano
0
「駐在保健婦」に関する高知、沖縄、青森を中心とした本。民俗学の著者が記した本とあって、主観もなく史実として読み進められる本。 疾病構造が感染症撲滅の時代は適していたのだと思うけれど、今の時代ではどうか?保健師の理想的な活動形態ではあるけど、駐在には自己犠牲が伴う。県と市町村の関係も変わっている。未熟児関係が市町村に権限移譲されたとき、県の保健師って何やってるの?とホントに思った。 個人的には、学生の時に卒業研究で取り組んだ「駐在保健婦」。こうした本に出会えて振り返りができたことは良かった。2019/01/20