出版社内容情報
京の郊外で暮らす雨宮蔵人のもとに、吉良上野介の子の家人が訪れた……。『いのちなりけり』『花や散るらん』に続く三部作最終巻。
葉室 麟[ハムロ リン]
著・文・その他
内容説明
大石内蔵助ら赤穂浪人四十七士の吉良邸討ち入りを目の当たりにした雨宮蔵人。それから四年経ち、妻の咲弥と娘の香也とともに鞍馬山で静かに暮らしていた蔵人のもとに、少年が訪れた。少年は冬木清四郎という吉良家の家人だった。清四郎の主人を思う心に打たれた蔵人たちは、吉良左兵衛に会うため配流先の諏訪へ向かう。次第に幕府の暗闘に巻き込まれ…。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。2007年『銀漢の賦』で松本清張賞受賞。2012年『蜩ノ記』で直木賞受賞。2016年『鬼神の如く黒田叛臣伝』で司馬遼太郎賞受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
201
葉室作品は卒業と言いながらそこから幾つも読んだ。そして葉室麟が逝ってからこの新刊が。『いのちなりけり』を読んだのはいつだったろう。三部作最終巻とあるが、今作だけでも十分成り立つ。武士とは・・政とは・・討入りや大奥、将軍継嗣等々お側の者の覇権争いも盛り沢山だったが、これは家族の、夫婦の物語だ。「いつまでも肩を並べ、影を並べて美しい景色を眺めて参りたい。」これ以上の妻の言葉があるだろうか。我が夫婦未だその境地に非ず(汗)お互いに「友」と言う清武と蔵人の言葉がラスト胸を打つ!2019/03/22
starbro
192
故葉室 麟は、新作をコンスタントに読んでいた作家です。本作は遺作・最後の長編でしょうか?江戸時代中期、超名人も多数登場し、華やかで渋い作品でした。紀貫之「色も香も昔の濃さに匂へども植えけむ人の影ぞ恋しき」著者の新作がもう読めないのは、寂しい限りです。2018/10/29
優希
66
面白かったです。タイトルは紀貫之の短歌から取られたのですね。蔵人と咲弥の絆に折々出てくるのが印象的でした。様々な想いが交錯し、武士の生き様を見たようです。爽やかで気持ちの良い読後感を味わいました。遺作というのが寂しさをおぼえます。2020/11/18
ひらちゃん
60
葉室凛さんの新刊。なんと「いのちなりけり」の続き。迂闊にも「花や散るらん」は未読です。しかし、読みたい気持ちは押さえ切れずに読み出しました。なんと、こんな続き方。娘も妻も蔵人と同様に生きており、清々しい。そして、どんな時にも頼れる漢です。雨宮蔵人。だからでしょうか。次々と敵が味方になっていきます。敵も友に変わる生き様。また会いたい。もう続きは読めないと思うと無性に寂しいです。先ずは「花や散るらん」でもう一度、蔵人達に会ってこようと思います。2018/11/03
hiace9000
51
葉室麟最後の長編小説は、葉室武士道の集大成たる傑作快作。次から次へと現れる敵方、その闇深い思惑と史実の絶妙なる掛け合わせの巧みさは言うに及ばず。他のどの作品においても作者が常に希求し、信じて止まない"誰人たれとも心奥にもつ人としての真の生き方とは何か"を、士道の忠義、忍びの非情と同時に夫婦、親子、友情と絡めて丹念に描き切り、壮大なる人情作品に昇華。本作における迫真の殺陣の描写は、眼前に実写映像がありありと浮かぶほど。蔵人が咲弥に贈った和歌への、咲弥の返歌には胸打たれる。男惚れする漢、またここにも見つけたり2020/08/14