出版社内容情報
14歳の玲菜(れな)には戸籍がない。母親は〈あの人〉から逃げるために出生届を出さなかった。母と二人、町から町へひっそりと移り住み、ここ川越にも二年。一人で勉強している玲菜のために教科書を探してくれるリサイクルショップの主人、秋吉とその孫の牧生とも顔見知りになったある日、突然「あの人に見つかった」という電話を最後に、母は消息を絶つ。学校とも、社会ともつながりのない少女を一人残して…。
生まれたときから、ずっと逃げ続けている少女。
彼女の心が砕けてしまわないように、ぼく達は何をすればいいんだろう。
つながりの薄い現代社会で、必死に手をさしのべようとする人々。
青春ミステリーの妙手が放つ、心温まるストーリー。
内容説明
“あの人”から逃れるために、母親と二人で住む場所を転々としてきた十四歳の玲菜には戸籍がない。その母親が突然、姿を消した。学校とも、社会ともつながりのない少女を一人残して…。心震える物語。
著者等紹介
樋口有介[ヒグチユウスケ]
1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第六回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
183
樋口有介は、新作中心に読んでいる作家です。無戸籍?の15歳の女の子が主人公なので、1年半前に読んだ『無戸籍の日本人』のようなシリアスなストーリーかと思いましたが、悪人が登場しないほのぼのとした人情ミステリでした。隣町の川越が舞台の小説は初めてです。7月は本書で読了、8月はどんな作品に出逢えるでしょうか?2017/07/31
モルク
117
戸籍をもたない少女玲菜。就学したこともなく、母親と二人で生活。「あの人」から逃れるために、2,3年に1度引っ越しを繰り返す。NPOにもどこにも相談できないということは…で、「あの人」とは暗黙に理解できる。大きなことなのに、玲菜本人も淡々としているし、事情を途中からとはいえ理解しているはずの「川越屋」のふたりもさほどの動揺がないのが不思議。全体的に言えば角田さんの「八日目の蝉」を軽くした感じだけど、樋口さんの作品らしくとても読み易い。2019/02/04
タックン
105
(あの人)から逃げるために戸籍がない少女・・・・。始めは重いテーマを予想したが意外にも軽くて読みやすい。でも真相には拍子抜けした。樋口さんが描く世界には美少女がつきものだけど、やっぱ草介シリーズみたいな軽薄な男とユーモアもないとね。何か樋口さんの作品でないような気がした。2017/09/08
Satomi
82
14歳の少女には戸籍が無い。学校にも通えず、病院へも行けない。〈あの人〉から逃れるために…。妻が夫のDVから逃れるために、子を無戸籍にした話かと思っていたらなんともやるせない真実が…。少女を匿い救い出そうとしてくれるリサイクルショップの主人がとても素敵だった。少女には幸せになってもらいたいと願わずにはいられない。2017/08/10
てつ
77
樋口さん。新作を追いかけている数少ない作家さんです。今回も期待を裏切らない出来で、楽しく一気読み。樋口さんの作風は独特で、雰囲気と会話が軽快で楽しい。次作も期待していますよ。2017/06/25