出版社内容情報
新興IT企業ジェイ・プロトコル香港の中井優一は、王としての旅を続けるため、殺人を犯すことにした──。一九九二年、理系恋愛小説『グリフォンズ・ガーデン』でデビューした著者の長篇第二作
内容説明
IT企業ジェイ・プロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、澳門の娼婦から予言めいた言葉を告げられる―「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港法人の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして恋愛小説。伝説のデビュー作『グリフォンズ・ガーデン』から22年―運命と犯罪と恋についての長篇第2作。
著者等紹介
早瀬耕[ハヤセコウ]
1967年東京生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業。1992年、『グリフォンズ・ガーデン』(早川書房刊)で作家デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまだまこ
64
マクベスの戯曲に誘われるように、どんどん深みに嵌っていく中井。経済の話には疎いため、親会社子会社の微妙な力関係は難しく、更にマクベスも未読で知識不足は痛感しつつも、それも苦にならない程の濃厚な読み応え。もう旅なんて、王なんてやめちゃえば…と何度思ったことか。最悪の想定をしていたため、最後は切ないながらも希望の残る結末で少し安心した。一緒に逃げようと言ってくれた彼女、そして遠いようで近くで見守ってくれていた彼女。2人とも愛情の形は違っていても純愛だったのかなと思う。中井と鍋島の知的なやりとりが素敵だった。2019/08/08
クリママ
56
香港、澳門などの東南アジアの都市で展開する。オシャレで、なんかカッコイイというのか、それが作者にとってはフツーのことなのか。このままこのボリュームを進んでいくのか…と思っていたら、思わぬ出来事からの急展開にのめり込む。まさか上場企業が、一介の会社員なのに、なんでコーラじゃなくてダイエットコークなんだ、どうしてマクベスから逃れられないの… 先が知りたくて、でも、ページが残り少なくなっていくのがさびしい、誰が敵なの味方なのか気の抜けないサスペンス、切ないラブストーリー。最ごの場面がよみがえり、胸震える読後。2019/03/02
Book & Travel
50
冒頭、沢木耕太郎の『深夜特急』を真似るマカオでのカジノシーンに心を掴まれる。ホーチミンのホテルマジェスティックは『一号線を北上せよ』に出てきたな。ICカード開発会社の香港法人に異動した優一は、自社の闇に巻き込まれていく。鍵を握るのはかつて恋心を寄せた高校の同級生だった。リアリティにやや疑問を持ちつつも、『マクベス』のストーリーに沿った、誰が味方で誰が敵か読めない展開と、高校の同級生というどこか心を掴む設定に、先が気になり一気に読み進んだ。二人のマクベス夫人のラストは胸を打つが、ちょっとお洒落過ぎかな。2019/04/23
pohcho
49
出張帰り、着陸地変更のため立ち寄った澳門のカジノで大金を手にし、娼婦から予言を告げられた中井。「あなたは、王になって、旅に出なくてはならない」戯曲「マクベス」をなぞる、長い長い旅のような物語。暗号の話などは正直よくわからなかったけど、アジアの混沌とした雰囲気、美味しそうな料理とお酒(アフリカンチキンとキューバリブレ!)儚い恋の話がよかった。何度も村上(春樹)さんを彷彿とさせた。こんな会社あるわけないと思うけど(笑)、敵と味方の区別がつかない手に汗握る展開も楽しめた。二人の女性が出会うラストシーンが好き。2019/10/02
あみやけ
37
難しかったですね。おもしろかったでずが、自分にはこの小説の本当のおもしろさはわかっていないのだろうなって思います。教養がないので。シェイクスピアも経済も数学もわかってないですからね。読解力もないし。こういう読書を楽しめる方は素敵だなって思います。★42022/08/10