出版社内容情報
漢字圏では、文学という語は古典と近代で意味の断絶をともないつつ、同じ語の形である「文学」がなお用いられている。その糸をたぐり寄せ,新たな視界へと導くエッセイ集。四季おりおりの話題をからめながら、ことばの交わりをたどり、漢文脈の森にわけいり、文学のありかを探る。PR誌『UP』で2006年から約11年にわたり連載された「漢文ノート」のうち、第13回から24回分を書籍化。
内容説明
四季折々のことばの森から文学の新たな視界をひらく24のエッセイ。
目次
春(霞を食らう;ともに詩を言う;双剣;年年歳歳;走馬看花;悼亡)
夏(瓜の涙;斗酒なお辞せず;口福;帰省;スクナシジン;友をえらばば)
秋(満目黄雲;〓の声;菊花の精;隠者の琴;読書の秋;起承転結)
冬(書斎の夢;郎君独寂寞;二人組;詩のかたち;杜甫詩注;漢詩人)
著者等紹介
齋藤希史[サイトウマレシ]
1963年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程中退(中国語学中国文学)。京都大学人文科学研究所助手、奈良女子大学文学部助教授、国文学研究資料館文献資料部助教授、東京大学大学院総合文化研究科教授を経て、同大学院人文社会系研究科教授。著書に『漢文脈の近代―清末=明治の文学圏』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『漢文スタイル』(羽鳥書店、やまなし文学賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tamami
42
東京大学出版会のPR誌『UP』に掲載された、漢詩文や小説、文章に関わるエッセイをまとめたもの。著者は身辺雑記云々と謙遜して書いているが、どうして本書のどの一編をとっても辞書と首っ引きでなくすらすら読める人がいたら、余程漢詩文、また日本文学に通じている人ではないか。そんなわけで詳しく解することなく読み終えたが、この詩句は諳んじている、この故事は読んだことがあるというように、面白さを感じるところもあった。各編には更に奥義を究める人向け?に詳細な注が付いていて、著者の専門領域の広さと深さを改めて思い知らされる。2022/06/24
みつ
11
春夏秋冬の4章に計24篇の漢文に因むエッセイを収める。著者の語り口は肩の凝らないものであるが、内容は自分には相当難しい。引用文の漢文と和文(文語文含む)の割合が、おそらくは7対3程度であるのもその原因か。それでも興味を惹いたから順不同にページをめくるうち、この書のリズムにいつしか馴染んで、徐々に読みやすくなってくる。以下は特に印象的な箇所。○「斗酒なお辞せず」の「斗酒」は、本来「大量の酒」ではない(紅葉の『二人女房』からの引用。p86)。○「瓜」に関連して鏡花の『瓜の涙』を引くくだり(p75)。(続く)2022/02/23
転天堂
0
漢文の素養なく日々を過ごしてきたのが大変惜しくなる。そんな思いを少しでも埋めあわせるべく少しずつ味わいながら読んでみた。江南六朝、隋唐、宋朝だけでなく、江戸時代や明治時代、さまざまな時代の内容が含まれていて大変面白かった。本当は素読、読み下しが自在にできるといいのですが。筆者の言われるように、白文と書き下し文が別に記してあるのはすっきりしていて見やすいと思う。2022/05/13