出版社内容情報
現代とは異なるルールで成立していた中世社会特有のモノの貸借=授受の実態、所有、契約概念の特徴を古文書群から描き出す。
中世におけるモノの貸借や授受が,いかに現代と異なる法則で成り立っていたのか.利息,質地をめぐる一枚の借用状からだけでは解釈できない実態を,そこに連なる古文書群をひもとき社会のルールを見出す.借り手と貸し手が共存する中世社会の特徴を明らかにする.
序 章 日本中世債務史研究の提起
第一章 中世借用状の成立と質券之法
第二章 中世の計算貨幣と銭貨出挙
第三章 中世の年貢未進と倍額弁償法
第四章 東国荘園の替銭・借麦史料
第五章 東国の為替と借用証文
第六章 室町期の代官請負契約と債務保証
第七章 日本中世の利息制限法と借書の時効法
第八章 中世請取状と貸借関係
第九章 中世契約状における乞索文・圧状と押書
終 章 中世債務史の時代的特質と当面の研究課題
【著者紹介】
井原今朝男:国立歴史民俗博物館教授
目次
序章 日本中世債務史研究の提起
第1章 中世借用状の成立と質券之法―中世債務史の一考察
第2章 中世の計算貨幣と銭貨出挙
第3章 中世の年貢未進と倍額弁償法―代納による貸借関係
第4章 東国荘園の替銭・借麦史料
第5章 中世の為替と借用証文
第6章 室町期の代官請負契約と債務保証―山科家領五か荘での年貢収取の復活
第7章 中世の利息制限法と借書の時効法
第8章 中世請取状と貸借関係
第9章 中世契約状における乞索文・圧状と押書
終章 中世債務史の時代的特質と当面の研究課題
感想・レビュー
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陽香
2
201111282017/06/23
こひた
0
サービス業への就業比率からわかるように、現代では何かをしてもらうという債権債務関係が非常に重要。しかし、法制度はもののやり取りという物権関係を基準に作られているため、債務史の体系化が進んでいないという指摘。 人文社会系の役目として、中世慣習法と近代法制の違いに踏み込んで考察している。例えば借金への意識。借りたものを返すという意識の低さ、冥府や日頃から八百万に見られているという意識など、現代とは違う行動原理が当時のカネを動かした。 初期の市場は債権が先という説が面白い、何か別の研究所で確認したい。2011/12/27