内容説明
「形」の模倣から「型」の習得へ。伝統芸道の伝承過程に光をあて教育実践に応用する。解題 「わざ」から「ケア」へ(生田久美子)を新規収録。
目次
序章 型なし文化のなかで
1章 「わざ」の習得
2章 「形」より入りて、「形」より出る
3章 「間」をとる
4章 「わざ」世界への潜入
5章 「わざ」言語の役割
6章 「わざ」から見た知識
7章 結び―学校、生活、知識
補稿 なぜ、いま「わざ」か
解題 「わざ」から「ケア」へ
著者等紹介
生田久美子[イクタクミコ]
1947年生まれ。1970年慶應義塾大学文学部卒業。1979年慶應義塾大学大学院社会学研究科教育学専攻博士課程単位取得退学。東北大学大学院教育学研究科教授。専攻は教育学・認知科学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポカホンタス
4
1987年に初版。認知科学選書の中の1冊。当時、ニューアカデミズムの潮流があり、学生だった私はこの選書を垂涎の眼差しで眺めていた記憶がある。古典芸能や職人世界における「わざ」についての教育論的研究。緻密な論考で興味深いが、学術的な体裁がしっかりありすぎて、結局野暮ったい印象がついてしまう。扱っているテーマは粋なテーマであるだけに残念。この領域は内田樹がすでに完成させてしまっている感がある。でもニューアカデミズム全盛期はこういういかにも学術、って感じの文章が流行っていた気がして、懐かしかった。 2009/11/01
Ryosuke Tanaka
1
従来的な認知心理学の「宣言的記憶」「手続き的記憶」といった枠組みでは捉えがたい知識のあり方を問う書で、なるほどなるほどと思いながら読むのだけど、「分けてもわからない話」にありがちな話として、「科学的な数量化によっては扱えない」(「間」とか)と言われてしまうと、じゃあ著者の描いた図式に本当に意味があるかどうかとういうのはどう判定するんじゃ~という感想を禁じ得ない。認知"科学"とはなんぞやみたいなこともついでに考えさせられる一冊。2013/09/30
pintarou
1
知識を論じていてこのような小論になったとのこと。「わざ」の習得プロセスを詳細に論じていておもしろい。とくに「わざ」言語についてもう少し詳しく知りたかった。2010/04/11
筋書屋虫六
1
近代教育の学習メカニズムとちがって、日本の伝統芸道には「わざ」を習得するための特別の方法があるらしい。弟子は師匠の「形」の威光模倣から入り、繰り返しを重ねて、文脈全体を取り込み、解釈への努力によって主体的な動き_「形」のハビトス化というそうです_にしていくことで、それが「型」となるとのこと。「わざ」習得の到達点は「間」の体得で、その習得プロセスには記述言語や科学言語とは異なる特殊なことば(「わざ」言語)があるそうな。この具体的な言葉がもっと知りたかったけど、論文だからそこまで要求出来ないですね。2009/10/06
コウ
0
技能継承はいかにあるべきか、組織における学びのあり方を考えさせられる。語り部の不足、生活を含めた時間の共有の不足に問題意識を感じた。2012/01/03