出版社内容情報
序 近代という社会装置
第1回 死の現象学
第2回 臓器移植と社会契約論
第3回 パンドラの箱を開けた近代
第4回 普遍的価値と相対主義
第5回 「べき論」の正体
第6回 近代の原罪
第7回 悟りの位相幾何学
第8回 開かれた社会の条件
第9回 堕胎に反対する本当の理由
第10回 自由・平等・友愛
第11回 主体と内部神話
第12回 真理という虚構
THE SPECTRE OF GOD
Toshiaki KOZAKAI
小坂井 敏晶[コザカイ トシアキ]
著・文・その他
内容説明
「本書は読者が著者と一緒に考えるための道具である。」伏線、随所に開く思考の扉…。好評の雑誌連載に三倍もの註を付した、著者渾身のエッセイ集。
目次
近代という社会装置
死の現象学
臓器移植と社会契約論
パンドラの箱を開けた近代
普遍的価値と相対主義
「べき論」の正体
近代の原罪
悟りの位相幾何学
開かれた社会の条件
堕胎に反対する本当の理由〔ほか〕
著者等紹介
小坂井敏晶[コザカイトシアキ]
1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まこみや
51
中世の神に代わって近代は「個人」(自由意志を持つ主体)を発見したと言われる。しかしそれは、事後的に根拠を正当化するために、外部の神の擬態として内部に捏造された虚構に過ぎなかった。虚構性が隠蔽される点で中世も近代も変わらない。いや、むしろ根拠や責任を内因としての人間自身に課すだけに、より苛酷な世界になったのである。/知識が増える快感を与える本は多い。しかし自分の足元が揺らぐような、知の箍が外れる体験を与える本は滅多にない。個人的には、文句なくここ数年で読んだ本のうちベスト1だ。2023/11/28
小鈴
30
「神がいると真面目な顔で言われると、こいつ、頭大丈夫かと思う」で始まるこの本は、今や当たり前すぎて疑いもしない概念「主体」「自由意志」「自由、平等、友愛」など近代の原理を「虚構」であることを暴く。読み終えて改めて最初の文章の「神」の言葉と入れ替え可能なことを知るだろう。神を追放して近代の扉を開けたが、我々は神の亡霊を消すことはできない。「集団の価値観を離れて合理性は判断できない。集団性こそが根拠の源泉であり、真理の定義である」(385)『社会心理学講義』とセットで読むと理解が深まる。面白かった。2020/09/20
りょうみや
18
同著の「社会心理学講義」が名著だったので、最新作の本書も手にとってみる。前書と被る内容が多いが、深い内容なので良い復習にもなり、相変わらず興味深く読むことができた。社会心理学を基にした哲学書といったジャンルだが、難しい専門用語を使わず分かりやすい。我々が一般的に当たり前と思っているであろう常識の根底を疑い、その解釈が覆される快感を何度も味わうことができる。2018/10/13
もちもちかめ
17
7月かな。朝日新聞に衝撃的な紹介のされ方をしてたので、すぐ購入してずーっとずーっと一人で読んでた。この本のおかげで、仕事で異動して大変だったの乗り越えれた(いや乗り越え中)。岸見先生のアドラー本もなんとか理解できた。小坂井先生。こんな人がいたんだね、知らなかった悔しいです。最後のリベット実験の話を高校球児息子にしたら、それ知ってるーってゆっくり実況の動画を紹介される。世代交代よ。母ちゃん3ヶ月かかったんだけど。久しぶりの哲学。ありがとうございます2023/09/26
えんど
13
神の亡霊とは、ニーチェが神が死んだといった後の主体が主役になった世界。しかし主体、自由意思というものは虚構であり、神がいた時の時代のように普遍性があるので亡霊のようにいまだにいるという理解。それを前提に各テーマをそれ虚構だよ!と思考させてくれてすごい楽しかった。2020/01/16