出版社内容情報
極限状況下におかれたロンドンの市民たちを描いてカミュの『ペスト』以上に現代的でなまなましいと評される、十七世紀英国の鬼気せまる名篇の完訳。
内容説明
一六六五年、ロンドンが悪疫(ペスト)に襲われた。逃れえない死の恐怖に翻弄された人々は死臭たちこめる街で、神に祈りを捧げ、生きのびる術を模索した。事実の圧倒的な迫力に作者自身が引きこまれつつ書き上げた本篇の凄まじさは、読む者を慄然とせしめ、最後の淡々とした喜びの描写が深い感動を呼ぶ。極限状況下におかれた人間たちを描き、カミュの『ペスト』よりも現代的と評される傑作。
著者等紹介
デフォー,ダニエル[デフォー,ダニエル][Defoe,Daniel]
1660‐1731。イギリス、ロンドンの商人の子として生まれる。作家、ジャーナリスト
平井正穂[ヒライマサオ]
明治44年(1911)、福岡県に生まれる。東京大学文学部英文科を卒業。東京大学名誉教授。平成17年(2005)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はやしま
31
コロナ禍の今、同じ疫病下にある世界を体験するように読了。章立てがなく改行も殆どない。現代でいえばネットにアップされた日々の出来事がまとめられたものを読むような印象。原題に"Journal ..."とあるように、架空の人物を設定しつつも内容は詳細なルポルタージュ。日に日に増加する死亡週報の数字が昨年から毎日報道で見る患者数のよう。原因などが解明されずワクチンもない中、日々恐怖に怯える人々がの行動が実際に見たもの、伝聞あわせて記録されていく。イカサマ香具師等、ロンドンから逃げ出す人々、死を前に我を失う人々。→2021/06/28
楽駿
31
品川図書館本。読書会仲間のお勧めで、こちらの「ペスト」も手に取ってみた。年代的にカミュの時代より新しいので、まず読み易い。そして、記録小説かフィクションかと迷う作品でした。ロンドンでペストの流行った時期に、デフォーは5歳。叔父の話と記録を中心に物語を組み立てている。ペストの流行と共に、何が起き、人々はどんな行動をしたのか、そして政策はどんなものであり、効果はあったのか。コロナ禍の今、比較対象しても非常に有意義な1冊だった。底辺の人を支える政策とたくさんの寄付が、大きく日本とは違う。宗教意識の低い事も関係?2021/01/22
mayumi
30
9月の「100分de名著」課題作品。「ロビンソン・クルーソー」のダニエル・デフォー著。カミュの「ペスト」は人間ドラマだったが、デフォー版は記録的でリアル。書かれたのも1722年と、カミュより200年近く前に書かれたもの。しかし、カミュよりもデフォーの書いた「ペスト」の方が現在のコロナ禍に状況が似ており、何百年経っても人は変わらないと思わせる。難点を言えば、小説というより、ペストの記録のようで、読んでいてやや退屈。あと、時代が時代なだけに、宗教色が濃い。ただ、ラストの一行は「明けない夜はない」と強く感じた。2020/08/27
ジョニジョニ
27
ロンドンだけで10万人がペストで死んだという1665年。その一年間の新聞記事を読んでいるような、リアルなヴォリュームでした。そんな狭い範囲で一日千人も死ぬ日があったりして、そりゃ埋葬も大穴に投げ込むような有様になるだろう。今読んでも科学的に感じる考察が多く、読み継がれる意義のある名作です。ただ、カミュはこの作中の語り部が、生き延びたことを「神に感謝する」ということに違和感を感じたのかな、と思いました。病死した人を、皆罪人だといっているかのようにも、とれますからね。2020/08/15
春ドーナツ
24
本書は1665年(寛文五・徳川家綱)ロンドンのレポートである。「自分で知らなくてもかかっていることがあるということ、また同様に自分では病気だと知らなくても他人に感染させることもあるということ」(349頁)「実際、自分がいつ、どこで、どうして病気をうつされたらしい、また、だれからうつされたらしい、ということのいえる人は、まず一人もいないだろう」(350頁)「『私*は健康な人以外とは交際したことはない。それなのに病気にかかってしまった!』*ある市民」(同頁)17世紀英国からの報告である。黒死病について調べた。2021/01/12