内容説明
一九八〇年代、イスラエルが占領地でユダヤ人入植を推進した際、パレスチナ人がオスマン・トルコの土地台帳を根拠に所有権を主張すると、入植者たちは旧約聖書に記された神とアブラハムの契約を示したという―。ダビデら古代の王の事績から、イスラム教徒の統治と十字軍、二回の大戦とイスラエル建国、そして戦争と和平交渉が繰り返される現代まで、聖書の記述が息づく「聖地」の複雑な来歴を、エピソード豊かに綴る。
目次
第1部 諸王国の興亡(紀元前一〇〇〇年まで;紀元前一〇〇〇年から九二五年まで―ダビデ、ソロモンの統一王国時代;紀元前九二二年から七二〇年まで―南北朝時代 ほか)
第2部 イスラム興隆の中で(六三八年から一〇九九年まで―第一次イスラム時代;一〇九九年から一一八七年まで―十字軍時代;一一八七年から一五一六年まで―第二次イスラム時代 ほか)
第3部 イスラエル建国ののち(一九四七年から一九六七年まで―ヨルダン王国時代;一九六七年から二〇一〇年まで―イスラエル時代)
著者等紹介
笈川博一[オイカワヒロカズ]
1942年東京に生まれる。東京教育大学文学部卒業。同大学大学院修士課程修了後、イスラエルのヘブライ大学に留学。その後、同大学で教鞭もとり、時事通信社通信員等を経て杏林大学教授に就任。現在、杏林大学社会科学部社会科学科教授。専門は古代エジプト言語学、現代中東学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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姉勤
36
最適化を目指さないものを嫌悪する輩なので、個人的にアブラハムの宗教との相性は悪い。水資源に乏しく、土地も痩せ、要害の地でも交易の要地でもない。そんな土地が聖地となって現代に至る。読後、エルサレムが人間のいい加減さや、危うさ、凶暴さと、わずかな尊さがが多重に染められた土地という認識を得られた。確かに宗教は、原始人類が文明化するのに多大な功績があったが、高度な情報化を成し後げた現代では、既存のままの宗教であるなら、文明を滅ぼす最大のものになるだろう。万人がフリードリヒ二世となることこそが、宗教だろうに。2023/12/08
かふ
21
三部構成。第一部が聖書の物語の歴史検証。第二部はイスラム興隆。十字軍からオスマン・トルコによる統治からイギリス統治へ。イギリス統治は整理できて良い。第三部イスラエル建国ののちから現在のパレスチナ問題。第一部は、聖書の成り立ちから、その歴史的検証。聖書の物語であって、歴史的にはかなり怪しい部分が多いのだが一通り聖書で描かれたエルサレムの歴史やイエス・キリストのことなどが言及されている。以下https://note.com/aoyadokari/n/n2aadd0eb17b42021/10/18
佐島楓
14
中東史についてよくわかっていないので購入。延々と戦争の歴史でとても悲しかった。環境が違いすぎる日本人には上手く理解できないのも仕方ないのかも。そうは思いたくないのだけれど・・・。世界史と宗教は切っても切り離せない関係だと痛感したので、少しずつ知識を増やそうと思う。2011/09/29
みのくま
11
エルサレムは交通の要衝でもなければ、天然の要害というわけでもない。極めて脆弱で不毛な土地である。だが、ユダヤ・キリストの総本山であり、イスラムにおいても第3位の聖地であった為に非合理的な戦争が繰り返され、それは今も継続中である。このエルサレムという都市がなぜここまでの存在になってしまったのかは、多分に偶然と後付けによって成されているようだ。それを紐解くには、「ユダヤ」とは何かについて考察せねばならぬ。ユダヤとは民族でもなければ国家でもない。ヘブライ語は人工的に作られた言語だ。ここに何か詐術がある気がする。2019/12/08
孤独な読書人
11
第一次世界大戦以降エルサレムという場所は争いの場になってしまった。2017/03/09