出版社内容情報
著者一周忌に際し、近現代作家50人にまつわる発見・発掘に満ちた名著を復刊。NHK放送文化賞を受賞した、名講義を併録。
内容説明
二葉亭四迷から大江健三郎まで近現代の作家49人の作品を読み込み、文学史的定説とは一線を画した多くの発見と発掘に満ちた名著『日本文学を読む』を復刊。併せて、世界の文化・芸術に通暁した慧眼で『源氏物語』から三島由紀夫まで、日本文学・文化の遺産を熱く語るNHK放送文化賞受賞の名講義『日本の面影』を初収録。
目次
二葉亭四迷
尾崎紅葉
幸田露伴
樋口一葉
泉鏡花
森鴎外
田山花袋
国木田独歩
正岡子規
島崎藤村〔ほか〕
著者等紹介
キーン,ドナルド[キーン,ドナルド] [Keene,Donald]
1922年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒、同大学教授。1962年、古典ならびに現代日本文学の翻訳による海外への紹介の功績により菊池寛賞。1998年、『日本文学の歴史』全18巻完結等により朝日賞。2002年、『明治天皇』により毎日出版文化賞。そのほか多数の著作により読売文学賞、日本文学大賞、全米批評家協会賞など多くの文学賞を受賞。2008年、文化勲章受章。2012年、日本国籍を取得。2019年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブトムシ
23
長い間、志賀直哉の文学の鑑賞は苦手であった。「小説の神様」という尊称は全く謎だったし、短編はともかく、中編や長編は小説というべきものであるかどうか疑問に思っていた。ついこの間、短編集を読むきっかけがあって、予想できないことだったが、感激した。『小僧の神様』のような作品に苦しくなるほど感動した。しかも、読み方も十五年前と違っていた。例えば、『小僧の神様』の場合、小僧の仙吉よりも神様を演じたAの心理に惹かれた。何というすばらしい短編だろうと思って、『和解』と『暗夜行路』ももう一度読んでみようという決心をした。
花乃雪音
20
「日本文学を読む」は雑誌「波」に連載された近現代の作家49人をそれぞれ5ページ程で紹介している。この少ないページ数にもかかわらず、これを書くためにいったいどれだけの労力を注いだのだろうかと圧倒される。 「日本の面影」はTV番組の講義録になる。「源氏物語」「徒然草」から「漱石と鴎外」「太宰と三島」まで体系的にというよりテーマを厳選して語っている。近代以降の作家について語られる文章を読むことが多かったため、テーマとして採り上げられていた西鶴や近松について無知であることを知らされ興味を沸かせてくれた。2020/07/04
カブトムシ
19
[大岡昇平]言うまでもなく、『俘虜記』、『野火』、『レイテ戦記』等の小説の他に、大岡氏には優れた作品が多いし、又、多様性の点ではどの作家にも譲らないが、何と言っても大岡文学の粋は戦争物にあると思う。大岡氏は明らかに戦争を憎み、小説には英雄のような存在は一人もいない。しかし、大岡氏は戦争体験の重要さを疑わないので、何回もその体験を反芻してその意義を突き留めようとする。そしてみごとに成功している。戦後の日本文学の一番の傑作は『野火』ではないかと私は思う(本文より)。「野火」の映画はモノクロとカラーの二本ある。
たいら
11
日本文学における作者と作品の紹介だが、ドナルドキーン氏の日本文学に対する熱い思いが随所に感じられ、適度に緊張感のある文体も相まって、非常に楽しく読めた。日本文学の新たな一面を知った。日本文学に関心のある方は必読と思います。2020/08/15
アンゴ
5
★★★★★手元に置いておきたい日本文学の羅針盤となる一冊。日本語母語話者でない筆者だからこそ可能な分析が緻密に、しかし知らない者にも理解できる言葉で展開されている。多くの翻訳を手掛けた筆者は、翻訳したら失われる日本語だからこその表現の部分と翻訳しても伝わる部分をちゃんと分けて正当に評価している。 日本文学の特質をして挙げる、「余情の文学、主観の文学、座の文学、文学と美術の関係、日本文学の普遍性」は、外から見た日本人の特質と符合する、筆者ならではの視点と考えられる。2020/07/12