内容説明
ドミニカの田舎での退屈な夏休み。伝説のマスク怪人を追うボクとアニキの冒険「イスラエル」。キレた女の子オーロラがボクに求めたものはドラッグだったのかセックスだったのか、それとも…。N.Y.の路上に生まれたラブ・ストーリー「オーロラ」。魔術的リアリズムと現代都市文学を見事に融合した自伝的作品10編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
143
ドミニカ出身の作家による短編集である。 全編に渡る 熱帯感が アメリカ的である。 貧困と暴力…父と母と兄ラファ、そして ボク …少年の眼で描かれる アメリカは ひどく騒がしい。 お洒落ではないアメリカの わいぜつな 雰囲気満載の短編集だった。2019/05/26
Y2K☮
27
著者初読み。言葉遣いが古いなと思ったら復刊らしい。ドミニカの貧困層で逞しく生きる少年とその父親を巡る連作短編集。「イスラエル」が白眉。子どもの残酷さが刺さる。イスラエル少年の出て来る二作と最後の「ビジネス」は素晴らしいが、けっこう作品の出来に波がある。訳の影響もあるのかな。移民としてアメリカへ渡った父親の苦労の一端が伝わる一方、別の家庭を作るなど同情しかねる点もあった。主人公が著者の投影であるなら、あの状況から大学へ進んで創作を学び、本作でデビューしたことになる。その這い上がる過程こそ小説で読んでみたい。2020/11/27
yokmin
16
短編集。最後の「ビジネス」(Negocios)がよかった。ドミニカの赤茶けた土ほこり、熱気と混乱を想起させる作品。2017/11/14
やまはるか
14
ジュノ・ディアス3冊目に古本で見つけて処女作に戻った。ドミニカのスラム、アメリカ移民の生活が素朴に赤裸々に描かれていると思って読んでいるとそうばかりではない高評価を受けたデビュー作に相応しい野心も垣間見える。最初の「イスラエル」は赤ん坊の頃にブタに顔面を食いちぎられ、いつもマスクをしている少年が登場する。ブタに喰われる話はマルケスだったかでも読んだ記憶がある。最後の「ビジネス」は英語を話せない男が航空チケット1枚で単身アメリカに渡り、国籍を取るため重婚するなど、違法移民のリアルな苦悩を描いて痛々しい。2023/05/15
ぱせり
13
熱帯の島にも、アメリカのストリートにも、熱い風が吹いている。決して気持ちのよい匂いなんかない。その道を歩くことしか許されなかったものが、道を押し広げつつ、渡って行く姿が好きだ。その手段の一番大きいものはきっと、彼の中のもっとも柔らかいものだと思うから。巻頭に置かれたグスターヴォ・ペレス・フィルマトの言葉は、作者の思いを代弁しているよう。 2016/08/17