内容説明
秋のある日、二組のカップルが山の温泉へ向かう。一緒にいるのに遠い四人にまとわりつく、猫の鳴き声と不穏な影。裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。大人になりきれない恋人たちの旅の一夜を美しく残酷に描いた長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
61
何だかゆらゆらゆれている感じがしました。温泉旅館に宿泊した4人の男女が視点を変えて物語を語っていくのが独特の雰囲気を醸し出していると思います。感じたことを書き綴っているだけなのに、心の闇が見えたり、人間関係の絡みみたいなものが伝わってくるようでした。そこには秘密や寂しさが存在していてじんわりくる感じがあります。ただ、何となく違和感のような不思議さがあって少し物語と距離を感じたような気がします。心の中は読めそうで読めない部分が多いのかもしれません。2014/08/31
たーさん(^-^)
57
四人の男女、それぞれ二組のカップルが温泉に行く、恋愛小説かと思いきや少しサスペンスもあり、西加奈子さん何作か読んでますが関西弁の文章じゃなかったからいつもの西加奈子さんの作品とちょっと違う感がありました。一人一人の目線で話が進み、この場面で君はそんなことを考えていたんだね~といった感じでした。ちょっと違う西さんの作品が読めました。2017/03/17
けぴ
51
田舎の温泉宿に宿泊する男女4人。宿での体験をそれぞれの視点から語る4章と事件についての短い3つのエピソードからなる構成。純文学なのか推理小説なのか青春小説なのか、判断難しい不思議小説でした。2022/06/11
美登利
50
う~ん、何だかよくわからなかったけど、映像化すると綺麗なのかもしれないと思える作品でした。人間はモノクロの世界で、池の鯉の艶やかさの対比とか。男女4人のそれぞれ複雑な思考と関係が絡み合っています。どことなく気味が悪いんだけど、割とスラスラと読みおえてしまいました。2014/06/12
MINA
44
「私はきっと、狂っているのだ。」 死んだのは誰?最後に出てきたトウヤマが精神的に縛られてる得体の知れない痩せぎすの女?数年前に文庫で読んだ覚えがあったけれど、今回も相変わらずよく分からなかった。ただ、四人の気持ちそれぞれの孤独や闇、閉塞感や悲鳴みたいな何かが真に迫ってきたような気が。アキオによる薬とは気付かないまま、とても危うく緩慢とした狂気の最中を漂い続けているナツが一番好きだしどこか羨ましい。美形であることや誰かとの肌の温もり等何もかも、決して己を救ってはくれないのだとまざまざと痛感させられた気分。2016/03/07