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出版社内容情報
自発的対称性の破れ、質量の起源。日本が生んだ天才が素粒子論にもたらした巨大な功績を、成功と失敗が交錯する人生とともにたどる。
内容説明
「自発的対称性の破れ」をはじめとする数々の新理論で「質量」と「力」の起源に迫り、その後のヒッグス粒子の発見や電弱統一理論の確立にも絶大な貢献をしたにもかかわらず、南部陽一郎は50年近くもノーベル賞受賞を待たされた。先進的すぎたため「予言者」「魔法使い」とも呼ばれた彼の発想はどのように生まれたのか?南部はどのような人間だったのか?初めての本格的評伝で解き明かす。
目次
第1章 福井の神童
第2章 東大理学部305号室の住人
第3章 天国か地獄か、米プリンストン
第4章 自発的対称性の破れ
第5章 南部理論が生んだヒッグス粒子と電弱統一理論
第6章 クォークめぐるゲルマンとの対決
第7章 ひも理論VS量子色力学
第8章 「予言者」南部とノーベル賞
第9章 福井新聞記者が見た南部の素顔
第10章 生涯、現役の研究者
著者等紹介
中嶋彰[ナカシマアキラ]
サイエンス作家。東京大学工学部卒業。日本経済新聞社入社、科学技術部次長、科学技術担当編集委員、ナノテクノロジー専門誌『日経先端技術』編集長などを歴任。1954年、兵庫県宍粟(しそう)市生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
196
”「南部の研究はつねに我々より10年先んじている。そこであるとき、南部を理解すれば他の人より10年先んじられる、と思いついた。しかし南部をやっと理解したと思ったらもう10年の時がたっていた」”。南部せんせーの優しさに包まれた本に感じました。「自発的に対称性が破れると質量ゼロの粒子が発生する」事の発見の名誉を掻っ攫われるのです。脇が甘いと著者に咎めるのですが、それはそうなのかも。でも2人の(後輩?)研究者の利他行為で助けられるの。そのお話の伏線回収も素晴らしいので、興味のある方は是非読んでみて欲しいのです。2021/11/13
trazom
110
一年の最後にこんな素敵な本に出会えて、本当に幸せな気分。南部先生のお人柄がよくわかる見事な評伝だが、それに加え、世界の最先端の物理学者が切磋琢磨する状況や、日本の物理学者たちの人間関係が窺い知れて、非常に面白い。特に、小柴昌俊先生、西島和彦先生、江口徹先生たちの利他的な行為に心打たれるが、仲間や弟子たちにそうさせることこそ、南部先生のフェアで謙虚なお人柄の象徴である。「自発的対称性の破れ」「量子色力学」「ひも理論」という3つの大きな業績を通じて南部先生の偉大さを噛みしめることのできる素晴らしい一冊である。2021/12/26
まーくん
97
日本人にとってノーベル賞といえば物理学賞が一番馴染み深い。そのノーベル賞が当然というような画期的業績を上げながら運悪く”忘れられた?”日本人研究者がいた。その業績「自発的対称性の破れ」は10年、時代の先を行ってたという。クォークの存在も考えられる前。その後、彼の理論を土台にした、質量を生み出すヒッグス機構や電弱統一理論の完成など研究成果が世に出ていく。彼の名は南部陽一郎。戦後早くに米国に渡りシカゴ大学で無給研究員から教授に上り詰める。2008年、周回遅れでノーベル賞受賞。論文が出てから50年近い歳月が…。2023/01/18
まこみや
40
一体どこをどうしたらこんなスーパー独創的なアイデアが次から次へと生まれるのだろう。読み終わって思わず溜息が出た。自発的対称性の破れ、量子色力学、ひも理論、いずれも素粒子物理学を根底から覆す画期的な新理論である。そうした理論を構築して質量と力の起源に迫っていく様は、あたかも名探偵が鮮やかに犯人を追求する本格推理小説を読んでいるような痛快さと興奮を覚えた。素人の私には理論そのものは何も理解できていないのだけれど、中嶋氏の比喩的説明は明晰で実に美しい。「魔術」と称される所以であろう。清々しさを感じた一冊だった。2021/12/27
しーふぉ
33
めちゃくちゃ面白かった。大河ドラマか朝ドラにして欲しいよ。自発的対称性の破れでノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎の伝記。人柄が温厚で偉ぶらず、親切な所も好感しかない。電弱統一理論やヒッグス粒子は南部研究を基にしているし、超ひも理論に繋がるひも理論も南部の功績。天才過ぎて凡人が何故理解出来ないのか分からず説明不足なのが天才たる由縁だが、挫折も度々経験しているのがまた魅力的。2022/09/18