石坂洋次郎の逆襲

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石坂洋次郎の逆襲

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  • サイズ B6変判/ページ数 306p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784065186015
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0095

出版社内容情報

【「はじめに」より抜萃』
石坂洋次郎ほど時代とともに忘れられたと思わせる作家は少ない。/映画『青い山脈』は1949(昭和24)年に封切られたが、大ヒットし、その主題歌とともにほとんど戦後民主主義の代名詞と見なされた。以後、石坂原作の映画が封切られない年は、1960年代末にいたるまでなかった。1950年代から60年代にかけて、石坂ほど映画化された小説家はいなかっただろう。旧作はもちろん、新作にしても小説が刊行されると同時に映画も封切られるといった状態にまでなっていた。典型的な流行作家だったのだ。だが、70年代に入るやいなや、その流行はあっという間に衰えた。これほど急激に語られなくなった作家はいなかったのではないかと思われるほどだ。(中略)/石坂には、事実、明朗健全以上に重要な特徴があるのだ。それは「女を主体として描く」という特徴である。主人公と言わずに主体と言うのは、女は主人公であるのみならず、必ず、主体的に男を選び主体的に行動する存在として描かれているからである。女は見られ選ばれる客体である以上に、自ら進んで男を選び、男に結婚を促し、自分自身の事業を展開する主体なのだ。明朗健全な爽やかさはこの主体的な女性が結果的に醸し出すのであって、逆ではない。(中略)/石坂が70年代において急激に読まれなくなったのは、その作品の本質を知ることなく、たんに明朗健全なだけの深みのない作品として退ける風が文壇に広まっていたからだろうと、私は思う。だが、それがいかに浅薄な見方であったか、いまや思い知るべき時が来たのだと私は考えている。(中略)/主題は近親相姦、それも、形容矛盾のように響くだろうが、いわば明朗健全な近親相姦ーー戸籍上は近親相姦になるが生物学的にはそうではないーーである。当然のごとく映画化もされなかった。いわば明朗健全が極限に達し、読者をして、個人とは何か、家族とは何か、社会とは何かという、人間社会の根底を揺さぶる問いに直面させるからである。(中略)/……石坂には、どこか人類学者に近いところがある。石坂もミードも、人類学者の視線を社会が要請するようになったまさにその場所に登場したのだ。石坂文学はつまりひとつの社会現象でもあったのである。しかも石坂文学を必要とした社会の状態はいまも少しも終わってはいない。忘れられていたあいだに、むしろ強まっているのだ。/石坂を知るには、フェミニストとして著名なリーアン・アイスラーの『聖杯と剣』や、それへの批判を含むシンシア・エラーの『紳士とアマゾン』を参照するのがいい。なかでも歴史人口学者エマニュエル・トッドの『家族システムの起源』は必読の文献といっていい。石坂が過激な小説家であり、家族システムが全世界的に過渡期にあるいまこそ、その過激さが必要とされていることを思い知らせてくれるからである。

内容説明

愛着する力こそ、すべての始まり!折口信夫、宮本常一、エマニュエル・トッドらが浮かび上がらせる、おもしろくも深い石坂文学の新世界。いま、再評価の号砲が鳴る!

目次

第1章 誰も彼をわかっていない
第2章 母系制をめぐって
第3章 唯一無二の文士
第4章 民俗学徒・石坂洋次郎
第5章 男無用の世界
第6章 家族と性
第7章 近親相姦へのまなざし
第8章 復活のとき

著者等紹介

三浦雅士[ミウラマサシ]
1946年生まれ。1970年代、「ユリイカ」「現代思想」編集長として活動。1980年代に評論家に転じ、文学、芸術を中心に執筆活動を展開。その間、舞踊への関心を深め、1990年代には「ダンスマガジン」編集長となり、94年からは別冊として思想誌「大航海」を創刊。2010年、紫綬褒章を受章。12年、恩賜賞・日本芸術院賞を受賞。著書に、『メランコリーの水脈』(サントリー学芸賞受賞)、『小説という植民地』(藤村記念歴程賞受賞)、『身体の零度』(読売文学賞受賞)、『青春の終焉』(伊藤整文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

古本虫がさまよう

1
著者が「現代思想」の元編集長ということもあって、ちょっと小難しい議論を展開しながらの評伝。石坂氏は、右翼はむろんのこと、左翼マルクス主義に関しても痛烈な批判をしていたし、娯楽小説作家ということで、軽く見られていたという。たとえば、『あいつと私』は、安保闘争直後の作品だが、左翼の欺瞞を暴くものだったという。晩年の『ある告白』『血液型などこわくない!』『女そして男』などは、家族関係や近親相姦等々をめぐる傑作とのこと。折口信夫、宮本常一ならまだしも、エマニュエル・トッドも出てきての石坂論。2020/04/08

Hiro

0
評判を知り読んでみた。表題の作家石坂はその昔青春映画の原作者として一世を風靡したが今はあまり話題にならない。私も中学生の頃テレビドラマ化された「若い人」を楽しく見た覚えがある。忘れられた作家のパターン。本書はしかしその石坂の主要作品を取り上げ母系制の社会、家族を称揚した独創性を詳しく論じ、家族のあり方が大きく揺らいでいる中での今日的意義を熱っぽく語っている。著者の石坂を紹介する手際は巧みでどの小説も驚くほど新鮮で興味をそそられる。えっ、そんなとんでもないことを50年以上前に書いてた人がいたの!という驚き。2020/05/24

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