講談社学術文庫<br> 中国人の機智―『世説新語』の世界

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講談社学術文庫
中国人の機智―『世説新語』の世界

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  • サイズ 文庫判/ページ数 253p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062919753
  • NDC分類 923.4
  • Cコード C0122

出版社内容情報

後漢末(2世紀末)から東晋末(5世紀初め)。豪放洒脱な竹林の七賢が登場し、「清談」が大流行した時代。当意即妙、鋭い舌鋒……。乱世に花咲いた嘲弄と逆襲
機智とは抗いつつ生きる者の武器である。後漢末(2世紀末)から東晋末(5世紀初め)。豪放洒脱な竹林の七賢が登場し、「清談」が大流行した時代。当意即妙、鋭い舌鋒……。命がけの言語表現に酔う。諧謔性に富んだ反射神経、自負心の誇示、侮蔑への鮮やかな反撃……。一筋縄ではいかぬ誇り高き人々の不退転の反俗・反逆の精神を切れ味鋭い機智に乗せて演じきった舞台、それが『世説新語』の世界である。内乱、戦争、めまぐるしい王朝交替。暗く険悪な乱世を生き抜く魂は、悲哀、憂鬱を乗り越え、豪放洒脱な生き様は究極の言語表現を生み出した。
王濛{もう}と劉諠倍たん}はつねづね蔡{さい}公に敬意をはらっていなかった。二人はあるとき蔡を訪問して語り合い、しばらくたってから、蔡にたずねていった。--あなたは自分で夷{い}甫{ほ}(王衍{えん})とくらべてみてどうだとお思いですか。
蔡はこたえた。--わたしは夷甫にかないません。王と劉は目くばせして笑いながらいった。--どの点でかなわないのですか。蔡はこたえた。--夷甫には君たちのような客がいない。(排調諠髏?)

学術文庫版まえがき
序 章 機智の書『世説新語』とその時代
第一章 『世説新語』の人びと──その生存様式
  (1) 君子神話の崩壊と秩序体系への挑戦
  (2) 個の論理の追求
  (3) 激情の噴出
  (4) 絶対自由の希求──酒・薬・清談
  (5) 反抗と保身
    むすび
第二章 『世説新語』その機智の構造
 その一 遊戯精神
 その二 機智の構造
  (1) 逆襲的機智表現
  (2) 引用(典故の運用)
  (3) 比 喩
  (4) 比 較
  (5) 思考過程の誤りによる機智
  (6) 逆説的な表現
  (7) 言語遊戯
    むすび
第三章 『世説新語』その機智の洗練──人物批評のレトリック
  (1) 『世説新語』の人物批評
  (2) 擬音(オノマトペ)
  (3) 自然現象を用いた比喩(自然比喩)
  (4) 比 較
  (5) カテゴリー論法
  (6) テクニカル・ターム
  (7) 圧縮表現
    むすび
第四章 『世説新語』と魯迅
  (1) 魏晋と魯迅
  (2) 魯迅の「敵対的」な機智表現
おわりに
原本あとがき
主要参考文献


井波 律子[イナミ リツコ]
著・文・その他

内容説明

諧謔性に富んだ反射神経、自負心の誇示、侮蔑への鮮やかな反撃…。一筋縄ではいかぬ誇り高き人々の不退転の反俗・反逆の精神を切れ味鋭い機智に乗せて演じきった舞台、それが『世説新語』の世界である。内乱、戦争、めまぐるしい王朝交替。暗く険悪な乱世を生き抜く魂は、悲哀、憂鬱を乗り越え、豪放洒脱な生き様は究極の言語表現を生み出した。大文字版。

目次

序章 機智の書『世説新語』とその時代
第1章 『世説新語』の人びと―その生存様式(君子神話の崩壊と秩序体系への挑戦;個の論理の追求 ほか)
第2章 『世説新語』その機智の構造(遊戯精神;機智の構造)
第3章 『世説新語』その機智の洗練―人物批評のレトリック(『世説新語』の人物批評;擬音(オノマトペ) ほか)
第4章 『世説新語』と魯迅(魏晋と魯迅;魯迅の「敵対的」な機智表現)

著者等紹介

井波律子[イナミリツコ]
1944年生まれ。京都文学文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程修了。中国文学専攻。金沢大学教授、国際日本文化研究センター教授を歴任、現在同センター名誉教授。著書に、『トリックスター群像』(桑原武夫学芸賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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崩紫サロメ

21
『世説新語』を通して中国の機智表現を扱った初期(1984年)の著作。『世説新語』は魏晉南北朝の「乱世」を背景として生まれたもので、反骨精神に満ちた鋭さとユーモアを持つ。著者はこの「彼らの朗らかな自己肯定は……苦い絶望を味わい尽くせた果てに、湿った屈折や懐疑をふり切り、生きる根拠として再確認された」とする。また、乱世のレトリックは魯迅や毛沢東といった近代の乱世に生きた中国人の間にも引き継がれていく。同著者の『中国的レトリックの伝統』と合わせて読み直したい。 2022/04/18

bittersweet symphony

2
オリジナルは1983年中公新書で発売された井波律子(1944-)さんのデビュー作。「世説新語」は後漢末から隋による統一までの乱世期の人々の言行エピソード集。本書は儒教的倫理が戦乱の世界でその説得力を失う中で権力に対して戦わずして戦う手段としてのニヒリズムとそれを物質的に支える酒とドラッグ(五石散)、それらを表現するレトリックを解説するものです。2010/03/20

DEN2RO

2
5世紀中ごろ編纂された「世説新語」は後漢末から東晋末(2世紀末から5世紀はじめ)の時代に生きた人々の言葉と生きた方を生き生きと伝える古典です。その中に中国人の歴史を貫く精神のひとつとして、機智と反骨――権力に抗い、しかも挫けることなく生き抜く姿勢を探った本です。2010/02/20

bittersweet symphony

1
通読途中の「文選(詩編)」(まだ3巻目)の「世説新語」ネタの登場人物たちがなかなか楽しいので再読。中国史に通底するレトリック切り口にするなら著者もあとがきに書いている通り魯迅・毛沢東と「世説新語」の間を補完する必要がやはりありますね(本書を読後本棚に戻したら学術文庫の井波本がもう一冊あってそれが「中国的レトリックの伝統」でしたが、あまり記憶に残っておりません)。 2023/02/04

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