出版社内容情報
泰平の緑の列島に生まれた持続的成長モデル
貨幣経済の発達、独自の物産複合、プロト工業化による地方の発展、人口の停滞と抑制――。
環境調和的な近世社会のあり方に探る、成熟した脱近代社会へのヒント。
鬼頭 宏[キトウ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
豊かな自然に依存した徳川文明。国際的には近代世界システムと冊封体制に対抗して日本型華夷秩序が形成され、国内は幕藩体制下、各領国が拡大する市場経済により統合されていた。そこに現出した貨幣経済の発達、独自の物産複合、プロト工業化による地方の発展、人口停滞と出生抑制。環境調和的な近世日本のあり方に成熟した脱近代社会のヒントを探る。
目次
第1章 日本文明史における近世
第2章 江戸時代の村に生きた人々
第3章 人口にみる江戸システム
第4章 人間を取り巻く環境
第5章 産業発展と生活革命
第6章 生活を支えた経済システム
第7章 生活としての徳川文明
エピローグ 徳川文明の成熟
著者等紹介
鬼頭宏[キトウヒロシ]
1947年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程満期退学。上智大学経済学部教授。専門は日本経済史・歴史人口学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
109
日本経済史の先生が書かれたもので主に経済がらみの視点での話が多く参考になりました。文明史とは言っているもののその文明を支えている庶民の生活などもよく書かれています。著者が言われているのですが最近はこのような歴史の話をあまり好まない経済学部の学生が増えていると嘆いておられます。私は何をするにつけても歴史というのは重要であると言い続けています。業務あるいはその会社の歴史などすべて知ってから今後の方向性などを検討すべきだと思っています。2017/09/10
coolflat
17
83頁。江戸時代後半の人口停滞をもたらした原因は何であったのだろうか。これまで一般に「小氷期」と呼ばれる気候寒冷化により頻繁に凶作が発生して、飢饉が起きたためであるといわれてきた。飢饉と栄養不足がもたらす病気に対する抵抗力低下が多くの人々の命を奪ったことは確かである。しかしそれ以上に、17世紀の人口成長の主要因となった出生率にブレーキがかかるようになったことがむしろ重要だった。この時代に、経済社会の成熟化が進み、江戸システムのもとでは人口成長を続けることが困難な状況が人口停滞の背後で起きていたのである。2023/09/27
かんがく
11
人口、土地、産業、寿命など膨大なデータの量で、生粋の文系としては読むのに苦労した。しかし、そのデータに裏付けられて江戸時代の経済システムとライフサイクルが見えてくる良書。市場経済がかなり浸透していたことがわかる。後、やっぱり田沼意次は凄いな。2018/10/21
sibasiba
11
再婚率が高く六回も結婚した極端な人もいるし3回位の結婚は普通だったぽい。循環都市江戸的なイメージでエコな時代という先入観は間違ってはいないが環境破壊が問題になってもいた。2013/09/05
風太郎
7
経済システムと人口学を中心に江戸時代がどのように発展し、停滞し、次の明治時代へと移り変わっていったかを述べた本です。単なる歴史的事実の後追いではなく、数値的データ、歴史的資料を基に、「考えさせる歴史学」が展開されており、非常に知的興奮を覚えます。高校で学ぶ歴史学も、暗記だけではなく、この本のように進めることができれば、魅力が増すのではと思わされた本でした。2018/03/31