出版社内容情報
日本に探偵小説が誕生して100年。なかで一頭地を抜く「乱歩」と「正史」の位置とは? 時代・社会背景と作家・作品との関係とは?我々の現代性の黎明期、日中戦争の前/日米戦争の後、江戸川乱歩と横溝正史――二人は探偵小説の夢を創造する。
個人の日常生活を成立させるリアリズムの場に深い〈穴〉があき、あるいはリアリズムの〈場〉が〈死者〉の声に触れて崩れるとき、人間に関わる真実が独特の顔をして垣間見えることがある。
だが、この真実を表象する手段は限られている。乱歩と正史はこの真実を寓喩――殺人とその不可能図形によって描き出す。
第一章 江戸川乱歩――探偵小説の創造
第二章 乱歩の無意識――疑惑とメタ・トリック
第三章 乱歩と正史――戦争の前夜を生きる
第四章 乱歩と正史――敗戦への時代を生きる
第五章 横溝正史――本格探偵小説の創造
内田 隆三[ウチダ リュウゾウ]
著・文・その他
内容説明
江戸川乱歩と横溝正史。日本探偵小説界に燦然と輝く二つの巨星。大正の“消費と欲望”文化と“抑圧と監視”社会の微妙な均衡のなか、世の中に浸透していく“透き見=探偵趣味”に呼応するように『新青年』を始めとする雑誌を中心に探偵小説は盛り上がりを見せる。密室のトリックから猟奇的作品、少年冒険譚へと幅を拡げる乱歩。編集者から作家へ、本格探偵小説家へ転回していった正史。二人の交流と作品を分析し、近代探偵小説の系譜を概観する。
目次
第1章 江戸川乱歩―探偵小説の創造(乱歩、始まりの時代;乱歩誕生―創作の奔流 ほか)
第2章 乱歩の無意識―疑惑とメタ・トリック(作者の享楽と疑惑;「陰獣」のメタ・トリック ほか)
第3章 乱歩と正史―戦争の前夜を生きる(不吉な兆候;探偵小説のリアリティと芸術味 ほか)
第4章 乱歩と正史―敗戦への時代を生きる(乱歩―「芋虫」の精神;乱歩―転身と仮面 ほか)
第5章 横溝正史―本格探偵小説の創造(新生と回帰;痛快な条件 ほか)
著者等紹介
内田隆三[ウチダリュウゾウ]
1949年生まれ。東京大学名誉教授。専攻は社会理論、現代社会論。2014年『ロジャー・アクロイドはなぜ殺される?:言語と運命の社会学』(岩波書店)で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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