内容説明
写真家の目に刻まれた過去の瞬間―記憶の奥にしまわれた原風景が鮮やかに甦り、置き忘れてきたいくつもの感情が揺り起こされる、珠玉の物語、全13篇。
目次
背中の記憶
はやくとかわいい
夢
カタツムリのなみだ
マーニー
タアちゃん
おとうと
ねんね
はつこい
やさしい傷あと
treasure hunting
ホリデイin高崎
a box named flower
著者等紹介
長島有里枝[ナガシマユリエ]
写真家。1973年、東京都中野区生まれ。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。California Institute of the Artsファインアート科写真専攻修士課程修了。93年、家族とのヌードポートレイトでアーバナート#2展パルコ賞を受賞しデビュー。2001年、写真集『PASTIME PARADISE』(マドラ出版)で、第26回木村伊兵衛写真賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aloha0307
15
四代にもわたる家族の記憶を、写真家長島さんが綿密に しなやかに&硬質で芯がズンとある文章で綴った。描く対象を掬い取る目のちからに感服。まさに文字で撮った写真だ。いずれ消えていく記憶を消えてゆく過程までを...こちらも幼少時に意識が回帰して、多くの故人となった大切なひとを想い出ししんみりと...2016/09/18
宮永沙織
13
とても読みたくて図書館で購入してもらった作品。選ばれた13枚の写真はどれも彼女の家族の絆を表しているようでいて不思議だけれど私の家族ともリンクしているような錯覚がした。家族の愛は疎ましくもあり、いとおしくもある。瞬間の切り取り方がお見事。家族写真を広げたくなりました。2010/12/17
はな*
11
写真家さんによる、家族や友だちとの幼い頃の思い出を綴ったエッセイ(講談社エッセイ賞、受賞作)。「綺麗なお菓子か何かの空箱に、整理しないでとりあえず入れておいた家族の写真を何年ぶりかに引っ張り出して眺めている、そんな気持ちで書いていた。」と、あとがきに記されてます。自分の幼い頃の思い出と重なり、懐かしくなったり少し苦しくなったりでしたが、すべては今の自分に繋がっていること…そう考えると、幼い頃のどんな思い出も愛おしく思えてきます。キラキラしたままお菓子箱の中で眠っている写真たちです。2015/08/21
Koki Miyachi
5
フォトグラファー長島有里枝の初エッセイ。大好きだった祖母をはじめ、家族や友人、大切な人達一人一人の記憶を丁寧に蘇らせる。じんわりと心に沁みる文章は愛情に溢れ、読み手にもシアワセをお裾分けしてくれる。言葉が丁寧に選ばれて、その時の気持ちにリンクして鮮やかな映像が紡ぎ出されている。あとがきにある・・・書くことで生まれた「わたし」が存在する世界と自分の記憶の世界の両方で二灯のストロボのように完全に同調して光っていた・・・という言葉が、表現者としての感性と資質を象徴しているように思った。2013/05/12
ま
5
苦しかった。私にとって、文字にするのが一番嫌で難しいと思う家族のことだったから。1つ1つのシーンのディテールを、まるで現像するかのように、濃密な文章で描き出している。いつか忘れてしまうのだろうか。遠い昔の自分と家族に戻りたくなった。2010/05/02