かわうそ堀怪談見習い

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  • サイズ B6判/ページ数 208p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784041048313
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

芥川賞作家が「誰かの不在の場所」を見つめつつ怖いものを詰め込んだ怪談集わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。そして、たまみの紹介の商会で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。別の世界の隙間に入り込んでしまったような。柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。

目次

〇 一 鈴木さん
二 台所の窓
三 まるい生物 四 文庫本
五 雪の朝
六 蜘蛛
七 雪の夜
八 電話
九 一〇 一一 一二 足音
一三 桜と宴
一四 光
一五 茶筒
一六 ファミリーレストラン
一七 三叉路
一八 山道
一九 影踏み
二〇 地図
二一 観光
二二 喫茶店
二三 幽霊マンション
二四 夢
二五 宮竹さん

柴崎 友香[シバサキ トモカ]
1973年大阪生まれ。99年短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2004年『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化。06年『その街の今は』で第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞、2006年度第24回咲くやこの花賞を受賞。10年『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞。14年『春の庭』で第151回芥川賞を受賞。

内容説明

読みかけていた本が、―ない。思い出さないほうがいい記憶が―よみがえる。別の世界との隙間に入り込んでしまったような。見慣れた風景の中にそっと現れる奇妙なものたち、残された気配。怖い日常。芥川賞作家が「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談集。

著者等紹介

柴崎友香[シバサキトモカ]
1973年、大阪府生まれ。99年、短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。07年、『その街の今は』で第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞、第24回咲くやこの花賞を受賞。10年、『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。14年、「春の庭」で第151回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

455
芥川賞作家、柴崎友香の怪談の試み。「恋愛小説家」のレッテルを返上すべく怪談を書こうとする小説内作家が主人公。彼女の模索がプロットを形作るという構成。かつての円朝や鏡花とは比べようがないが、それでも独自のスタイルの怪談を描き出すことには成功している。ただ、なんだかアマチュアっぽさが抜けきらないようだ。もっとも、そこが本書の特質なのだが。初出は「野生時代」等への連載だが、まだ続きが書かれるのだろう。続篇も購入するかと言えば、私の中ではこれで完結といったところか。2019/12/20

nuit@積読消化中

121
タイトルはもちろん、フジモトマサルさんの表紙、挿画が柴崎さんの世界観に合っていて、とても読んでいて心地よい優しい怪談でした。怪談ばかり読みふけってると、ふと、何か気配を感じた“気がする”のは、実は私もよくあります。でも、私の場合は絶対に視えてないですし、絶対に視たくないです(苦笑)。印象に残ったのは、つがいの蜘蛛のお話「蜘蛛」、仲の良さそうな老夫婦の会話が聞こえる「喫茶店」、また「地図」に登場する四代目と語り手の恋の行方!?です。また続編にはその辺りも進展してて欲しいところですが、それはないか…。2017/05/28

takaC

115
なるほど確かに「怪談見習い」だね。結構怖かった。2018/02/04

なゆ

100
いいねいいね~。柴崎さんが怪談って意外すぎると思っていたが、読んだら実に柴崎さんらしいじわじわホラー。恋愛小説家から怪談作家に転身するために、友人やいろんな人に怖い話を聞き回っているうちに…という話。あるかなきかの幽けき怖さが、気がつくとあっちにもこっちにも。そう、なんだかよく分からない〝気配〟こそが怖いのだ。だんだん、ジャブのように効いてくる怖さ。かつてここにいたはずの人、そこにいるはずのない人、遠く隔たった場所や時間も意識した作風が柴崎さんならでは。フジモトマサルさんのイラストもさりげに怖くて。2017/04/16

巨峰

79
故郷の町に帰ってきた小説家の女性。恋愛小説家というレッテルに違和感を感じた彼女は、怪奇小説を書こうとして、中学の頃の同級生にコンタクトを取るのだか・・・それが過去の怪奇を呼び起こし、結果としてあの世界との通路を少しだけ、ほんの少しだけ、開いてしまう。柴崎さんのいつものスタイルで、日常と怪奇の隙間をほんの少し描いた作品。個人的には久しぶりに大阪の町が舞台となった柴崎さんの小説を読めてうれしいです)2018/09/02

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