出版社内容情報
これまで金融機関や商社での勤務経験を生かしてベストセラー経済小説を発表してきた著者が新たに挑んだ社会派巨編・司法内幕小説。
内容説明
これまで金融機関や商社での勤務経験を生かしてスケールの大きいベストセラー経済小説を発表してきた著者が新たに挑んだ社会派巨編司法小説。昭和四十年代から始まった人権派裁判官粛清人事=青法協問題(ブルー・パージ)と原発差止め訴訟の二つを軸に、戦後の裁判所の歴史を内側から明らかにする。正義と保身のあいだに揺れる生身の裁判官の人間ドラマ。
著者等紹介
黒木亮[クロキリョウ]
1957年北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学大学院(中東研究科)修士。大手都市銀行、証券会社、総合商社に二十三年あまり勤務し、国際協調融資、プロジェクト・ファイナンスなどを手掛ける。2000年『トップ・レフト』で作家デビュー。英国在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まーくん
52
久し振りに小説を。社会の基本でありながら、一般人にはうかがい知れない裁判官の生態を。小説の形を借りたノンフィクションと言えるのかも。数人の裁判官を中心に、その司法試験から裁判官としての成長や苦悩を時々の訴訟対応と共に辿っていく。彼らよりは若干若い世代だが、ほぼ同時代的に長沼ナイキ訴訟や原発訴訟などの流れを感じることができ、様々に当時のことを思い出した。以前、自分も多少事情を知った国際プロジェクトを題材にした小説を読んだが、その的確な取材力に感心した。本作も緻密な取材に裏打ちされているに違いない。下巻へ。2019/02/23
おさむ
44
ありそでなかった、リアル裁判官小説。綿密な取材に基づいて描かれているようで、違憲判決や左遷人事、青年法律家協会関係者のパージなどなど戦後の裁判所を巡る「黒歴史」がたっぷりで、なかなか読み応えがあります。それぞれモデルとなった人物は誰なのか、想像をめぐらせるのも一興かも。原発裁判が小説のもう1つの柱ですが、テクニカルでわかりにくい話をなるべくわかりやすくしようとする筆者の努力が感じられます(それでもわかりづらいけど笑)2017/09/12
ヤギ郎
16
上巻。徹底したリサーチに基づく、戦後司法界の物語。大法院時代を経験したベテラン裁判官と民主主義の時代に誕生した若手裁判官が入り乱れる時代の中、正義と自由・民主主義を信念に「人を裁くこと」を考える。現実の事件が実名のまま登場するので、(特に法学を学んだ人は)「あの事件だ!」とアンテナが反応する。三権(立法・行政・司法)のいずれも国民と密接にかかわっている。その一翼を体験できるいい素材である。表紙には天秤と権を持った「正義の女神」ユースティティアが描かれている。何色にも染まらない黒の法服を着た人間ドラマ。2019/12/11
わたなべよしお
14
はっきり言って、小説としてはそれほどのものではない。だが、戦後の日本の司法史を概観するには最適な書だと思う。青法協の問題も長沼ナイキ訴訟も知っているつもりだったが、実はよくわかっていなかった。裁判や司法に興味のある人は勿論、司法に携わりたいと思っている人には是非、読んでほしい。2016/02/17
しゃん
10
黒木亮さんの作品は「巨大投資銀行」以来。大学時代に憲法の講義で勉強した判例の内実が刻銘に示されていて、この熱い人間ドラマを非常に興味深く読むことができた。本書は裁判官・裁判所を通じた戦後史ともいえ、上巻だけでも読み応えがあった。ただし、どうしてもドキュメンタリータッチでの表現が続くので、文学作品を読んだ後に本書を読むと、文体の単調さに少し飽きてしまうところがあったのは否めない。個人的には、金沢、能登、大阪、天草と縁のある土地が舞台になってもいたので、親近感を持って読み進めることができた。次、下巻に移ろう。2016/02/06