出版社内容情報
俗なものと退けられ不遇をかこつこと久しかった歌謡。「折々のうた」の魅力は、そうした名もなき作者の流行歌と、文学史上に名を残す作者の詩歌を隣り合せ、連綿とつらねる面白みにある。また、その連なりが大岡信の詩でもあった。「うたげ」に合す意志と「孤心」に還る意志と。二つの意志のせめぎ合いから生まれる豊穣なる詩歌の世界。
内容説明
俗なものと退けられること久しかった歌謡。「折々のうた」の魅力は、そうした名もなき作者の流行歌と、文学史上に名を残す作者の詩歌を隣り合せ、連綿とつらねる面白みにある。その連なりが大岡信自身の詩でもあった。「うたげ」に合す意志と「孤心」に還る意志と。二つの意志のせめぎ合いから生まれる豊饒なる詩歌の世界。
目次
歌謡―うたげの余韻
詩―孤心へ向かって
著者等紹介
蜂飼耳[ハチカイミミ]
1974年神奈川県生まれ。詩人・作家。詩集『いまにもうるおっていく陣地』(紫陽社)で中原中也賞、『食うものは食われる夜』(思潮社)で芸術選奨新人賞、『顔をあらう水』(思潮社)で鮎川信夫賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
92
蜂飼耳さんが編纂したこのシリーズ最後の「歌謡・詩」の「折々のうた」です。短歌や俳句の範疇に入らないものを古代から近代まで収めていて選者の性格がよくあらわれている気がしました。もともと新聞連載のものであまり長くはできなかったということで、詩などは短いものや一部分が収められています。このシリーズ5冊はこのような観点もありかということで楽しめました。2020/05/25
あきあかね
27
伸びやかな古代の歌謡から始まり、平安びとの哀歓を切りとった梁塵秘抄、幽玄と余情に満ちた漢詩、前衛的な現代詩まで、本書の射程は広大である。『折々のうた』の選集ではこれまで「短歌」と「俳句」が編まれてきたが、今回の「詩と歌謡」が最も詩歌の多様性、懐の深さをはらんでいる。 前半の歌謡は、田植歌や琉歌まで幅広いジャンルが収められている。「恋に焦がれて鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」といった耳慣れた文句が江戸中期の昔から愛唱されていたことにも驚いた。⇒2020/04/28
ひさしぶり
21
古代から近代歌謡、中国詩、日本漢詩、近代・現代詩、翻訳詩と多岐にわたり収録。●知らず 兵禍何の時にか止まん 垂死の閑人 万里の情/河上肇‥‥今は病禍 ●花の種は地に埋もれて千林の梢に上り、月の影は天にかかって万水の底に沈む/謡曲「蝉丸」●池の色溶々として 藍水を染む 花の光焔々として 火春を焼く/白居易 ‥‥今年の春は花見ができるかしら2021/01/31