出版社内容情報
より心豊かな生き方を、格差社会のなかで考える。
内容説明
ますます深刻化する格差社会。このなかで、どのようにしたら、より幸せに生きられるのか。格差研究の第一人者が、社会のさまざまな制度の問題点を指摘しつつ、経済学のみならず、哲学、社会学、心理学などから考える。経済的な豊かさに留意し、心豊かな人生をおくるには―個々人と社会のあり方を提言。
目次
第1章 ますます深刻化する格差社会
第2章 格差を是正することは可能か
第3章 脱成長経済への道
第4章 心豊かで幸せな生活とは
第5章 いま、何をすべきか
おわりに―私が思うこと
著者等紹介
橘木俊詔[タチバナキトシアキ]
1943年兵庫県生まれ。小樽商科大学卒、大阪大学大学院修士課程修了、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授、同志社大学教授などを経て、京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授。専門は労働経済学、公共経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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5 よういち
97
トマ・ピケティが著書『21世紀の資本』の中で、先進国での格差拡大を懸念して久しいが、日本でも格差が拡大し始めた。格差拡大は限られた富裕層に貧困層という二極化を生む。そして日本は資本主義国の中でも有数の貧困国家となっているのだ。◆働くことの意義を説くことが多い日本であるが、そこには疲れが見え隠れする。働くことに意義はないという思想もある。労働以外のものに、自己実現を求めるのは自然なことだとも。労働時間を短くし、余暇時間を長くして人間性の高い生活が好ましいとの主張◆分かるが微妙だなぁ。2020/03/03
壱萬弐仟縁
36
従来の幸福論は哲学、社会学、心理学、文学中心。本書の特色は、経済的な豊かさと幸福度の関係を分析した経済学の視点を加味している(ⅱ頁)。金持ちの富裕度の高さを示す指標は、所得額よりも資産額のほうが明確とのこと(8頁)。資産額とは現有の土地、住宅、株式、債券、家具、装飾品、自動車などの資産を現在価格で評価したもの(9頁)。戦前日本は超格差社会(超不平等社会)だったという(21頁)。データの信頼性からすると、定義が各国共通の相対的貧困率が絶対的貧困率よりも信頼性は高い(28頁)。2017/03/16
ゆう。
21
日本の現状を近代経済学の立場から分析し、格差社会の拡がりを指摘していいます。この分析自体はとても重要だと思いました。ただこうした格差社会のなかでどうすれば人々が幸福を感じることができるのかという問題提起は、基本的に観念論的であり、経済学的に分析したものとどのように関連しているのか分かりづらかったです。2016/07/15
*
16
失礼ながら、著者の年齢、経歴から「高齢者向け説教エッセイ」かも、と邪推してしまった。しかし、実際は淡々とした筆致の中に温かさを感じる、次世代への提言だった。楽観論も多く、エッジが効いているとも言えないので物足りない人もいるだろうが、社会学や経済学をかじり始めた学生への「入門書」には適していると思う▼2013年の時点で、最も幸福度の高い国トップ3はデンマーク、スイス、アイスランド。W杯やEUROでの素朴な盛り上がりを見ると、確かにアイスランドの人々は幸せそうだ。2018/07/19
Francis
14
格差論を論じてきた橘木先生の幸福論の集大成。簡単にまとめると人口減少社会となった日本では経済成長は難しく、かりに経済成長を目指すとしたところで経済格差が広がるだけ、むしろ無理な経済成長を志向せずに格差是正に努め、ドイツ型の中福祉中負担政策を取り、教育の充実に努めよ、と言うこと。そんな難しいことではないのだが、意外と実行するのは難しそう。でもこれが一番日本国民の支持を得られそうな気がするし、世界にとっても良いことだと思う。最後の章に出てくる著者の労働観も大いに共感できるものだった。2016/08/21