内容説明
決壊する河川、崩壊する山々、危険をはらむ土砂ダム…。東日本大震災から半年後、紀伊半島を襲った台風は一〇〇名近くの犠牲者を生んだ。その時、人々は何を見たのか。奈良県十津川村、和歌山県那智勝浦町の現場を、ノンフィクション作家が行く。首都水没予測も含め、豪雨災害の実態を伝える迫真のドキュメント。
目次
第1章 深層崩壊する山々―奈良県十津川村(台風一二号の爪痕;十津川村災害史;救援体制はどう作られたか)
第2章 那智谷を襲った悲劇―和歌山県那智勝浦町(時間雨量一〇〇ミリ超の現実;太田川を警戒せよ;死角だった那智谷;自衛隊災害派遣;災害現場と役場との間)
第3章 首都水没への警告(ゼロメートル地帯;土地に刻まれた歴史;カスリーン台風を語る;減災へ)
著者等紹介
稲泉連[イナイズミレン]
ノンフィクション作家。1979年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2005年、『ぼくもいくさに征くのだけれど―竹内浩三の詩と死』(中央公論新社)で大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おいしゃん
24
しばらくこの著者のノンフィクションを追っているが、今回は和歌山を襲った豪雨災害や、都内の災害に対する備えなどに迫る。ルポというより、防災についての論文というテイスト。2021/06/05
よこしま
22
先月末に起きた広島市土砂災害の被害が尋常ではなかったので、もう一度、豪雨災害に対しての教訓を得たいと借りてみました。本題に入ります。◆2011年の9月、台風12号により紀伊半島の南部である奈良県十津川村や和歌山県の那智勝浦、被害の大きかった2箇所にスポットが当てられています。十津川村は明治時代にも災害があったこと、沢山できた堰止湖の処置の大変さ、那智勝浦では予想されなかった川での氾濫により取り残された地区の模様などが書かれてます。最終的には人が動くのだということが分かりました。首都圏への警告は別冊にて。2014/09/09
壱萬弐仟縁
22
十津川村。鹿島建設の人によると、ガリ浸食とは、尾根上に浸食されている ラインを伝って湧水が流れ、汚水が流れる減少(5頁)。川の増水、道路決壊という経過の見える災害の末に、大規模な土砂崩壊という見えない災害が起こるという(17頁)。責任者はそれを想定外と称して、対策が後手に回る。しかし、連絡手段が途絶えても、独自に住民は動いた。いざというときはやることが早い(44頁~)。被害は死者6名、行方不明6名、48棟全半壊、 道路損壊134カ所(45頁)。那智勝浦町。 2014/09/05
糜竺(びじく)
20
2011年に紀伊半島を襲った台風による、豪雨災害のルポ。状況がリアルに伝わる内容で、色々と考えさせられました。また、残り三分の一は、東京の豪雨災害のリスクについて書かれていましたが、かなりの危うさに驚きました。2021/09/08
MOKIZAN
18
被災地域の方々には申し訳ないが、東京都区内の防災対策への関心で、読んだ次第。以前、江戸川区が地下鉄駅前に地下駐輪場の建設を続けていた頃、3駅の工事に絡ませてもらった。同じ頃施工された、武蔵野市の同工事現場と比べて、開削時の地盤状況から、「こりゃ何処掘っても掘るほども水道(みずみち)が出来るんじゃないのかな」と感じていた。本書の記述から「海抜0メートル」⇒温暖化進めば「海面下」の地盤にかかる事態の怖さを再認識した。水は、自身では上から下にしか移動しない。下らなきゃ溜まるだけ、何かを支える力は持っていない。2016/06/12