内容説明
その計画は１９８４年に発表された。高速道路を通すため、国定公園である高尾山にトンネルを掘る。寝耳に水の出来事で、ただちに反対運動が湧き起こった。しかし、ついにトンネルは掘られ、２０１２年３月にはインターチェンシが開通。けれども、２８年にわたる粘り強く熱い反対運動と裁判から得られたものは少なくない。自然保護と脱公共事業の先駆的な活動として注目を集める市民運動の当事者たちが、自らの思い、教訓、未来への展望を伝える。
目次
１章 奇跡の山・高尾山
２章 公共事業に奪われた日常
３章 私たちの活動の記録
４章 裁判における挑戦と成果
終章 高尾山から公共事業を問う
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コニコ@共楽
25
先日、読メの友から機会を得て、高尾山に登った。山頂での読書会用に山の本を探していて出会った本。高尾山が低く、小さな山でありながら、1598種類の植物が生育（1966年調査）し、日本一の多様性を誇る山だと知らなかった。また、日本の昆虫の三大生息地としても知られているなんて。予想をはるかに超える自然の豊かさを持つ山だと驚いた。実際に登ってみて、湧水があふれ、滝があり、森があり、都会のこんなに近くに残された自然を発見した思いだった。この本は、その自然の真ん中に10年前にトンネルを作った顛末が記された貴重な本だ。2022/10/27
びすけっと
11
2013年12月刊。遠征先図書館出会い本。都会のオアシス高尾山の下にトンネルを掘ってしまったこと、それに抗する裁判等活動が行われていたことは知っていました。でも高尾山がこんなにまで多様性に富む山だとは知りませんでした。利便性と経済性は高尾山の多様性を上回るのか？ きっと否だ。すぐには結論は出ないと思いますが。行楽地化している高尾山、これも何とかせねば。世界遺産に登録された富士山、次の更新時に取り消されるかもしれない懸案事項をクリアできるか。同じように高尾山の今後も目が離せません。2014/08/03
Takao
4
２０１３年１２月４日発行（初版）。「すでに高尾山の山腹にトンネルが掘られてしまった…」という思いもあり、なかなか読めなかった本書。２０１６年９月に高尾山を取り上げた「ブラタモリ」を観て、「何を今更」と怒りのようなものが湧いてきて、一気に読んだ。「高尾山へのレクイエム」ではなく、高尾山の自然保護の闘いから学ばれた「未来への警句」として読んだ。１０００年にわたって守られてきたものが、わずか数十年前の「愚行」によって壊されてしまったことへの怒りが湧いてくる。「我が亡き後に洪水よ来れ」でいいのか、ニッポン。2016/09/23
Ｒ１０
1
ミシュランガイドで三つ星を獲得したと話題になっていたが、山頂付近に山にあるとは到底思えないようなトイレを作ったことでも（ある意味）有名な高尾山。トンネルも掘られてしまった。反対活動の新聞広告は見たことがあったけれども、地元の人々がどのように反対活動をしていたのかは知らなかった。2章は特に読んでいてとても辛い内容だった。しかし、市民運動の活動記録としてはとても重要なものになるだろう。2015/02/18
