出版社内容情報
父さんの暴力から逃れ、家を飛びだしたアリソン。古い家の納屋に身を隠すが、そこにはマーラという老女が暮らしていた。認知症のマーラは、彼女を昔の友人・タフィーと間違えているようで--。孤独を抱えたふたりが出会い、思いがけない同居生活がはじまる。カーネギー賞作家が詩でつむぐ、友情と再生の物語。
内容説明
父さんの暴力から逃れ、家を出たアリソン。古い家の納屋に身を隠すが、家主のマーラという老女に見つかってしまう。認知症のマーラは、彼女を昔の友人・タフィーと間違えているようで―。孤独をかかえたふたりが出会い、思いがけない同居生活がはじまる。カーネギー賞作家が詩でつむぐ、再生の物語。
著者等紹介
クロッサン,サラ[クロッサン,サラ] [Crossan,Sarah]
1981年、アイルランドのダブリン生まれ。大学で哲学と文学を専攻し、ケンブリッジ大で英語講師を務めたのち、2011年にThe Weight of Waterでデビュー。2015年に発表した『わたしの全てのわたしたち』(最果タヒ、金原瑞人訳、ハーパーコリンズ・ジャパン)で、カーネギー賞を受賞
三辺律子[サンベリツコ]
翻訳家。白百合女子大学大学院修了。海外文学ブックガイド「BOOKMARK」の編集人も務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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☆よいこ
74
詩の形式で書かれた物語。横書き▽16歳のアリソンは父親からの暴力から逃げ、父の元恋人ケリーアンに会いに行く。だけどケリーアンと会えず、街をさ迷っていた。ある家の納屋に潜り込み隠れていると、マーラに話しかけられた。マーラは痴呆症で、アリソンを昔の友人タフィーだと思い込む。マーラの世話をしつつ、アリソンはタフィーとして暮らし始める。父からの暴力で顔に酷い火傷をおい、常に不安と恐怖がフラッシュバックするアリソン。息子のことも死んだ娘のことも忘れて怯えるマーラ。ふたりは不器用ながらもなんとか日々を過ごす▽訳がいい2022/09/03
がらくたどん
31
StanpBooksシリーズなので当方ではYA棚だが、大人でも充分読み応えのある散文詩形式の物語作品。父の暴力から逃れた少女が認知症の老女の家に隠れ住む。老女にとっては過去の友である「タフィー」として、出入りする人々にとっては「見えない」存在として。現実の世界から締め出され幻の中でだけ存在を許されて生きる「生身の」魂の揺らぎが、「詩」という形式を得ることで説明的になりすぎず情緒に直接響いてくるのが面白い。物語の主題そのものより、表現形式が違うと心の違う部分が揺れる面白さを味わえた。2022/01/12
ぐうぐう
30
散文詩のスタイルで綴られた小説『タフィー』。詩は、その短さゆえ、ダイレクトであり、心情がより伝わりやすい。父の暴力から逃げようとする少女の気持ちが、痛いほど突き刺さってくる。ただし『タフィー』は、短い詩が積み重なることで長編となり、物語となって読者を誘う。逃避行の果てに出会った老女マーラ、彼女は認知症を患っており、少女をかつての親友タフィーと勘違いする。「わたしは隠してる、母さんと、父さんと、/父さんの女たちのことを。/わたしは隠してる、むかしのうちと、今のうちと、/(つづく)2023/12/11
星落秋風五丈原
29
これ全部散文体なんですね。詩のようですらすら読めました。2021/12/16
marumo
17
「わたしの全てのわたしたち」が最高に良かったので期待度MAXでした。が、確かに良かったけれど、予想を上まるものはなかったかなあ。たぶん、こういう話だろうなと思った通りのもの。でも、散文詩で書かれる少女の心情はダイレクトに胸に迫り、徐々に見えてくる父親の暴力の酷さに身がすくみます。詩で綴られた物語をいくつか読みましたが、よく解説されるように、登場人物の感情がダイレクトに心に流れ込んでくる感覚が独特で癖になります。2022/03/21