内容説明
政治哲学が“現代”に切り込む。トクヴィルや現代フランス政治哲学の視座から、個人と社会、自由と平等、労働と格差、デモクラシー、市民権などについて考察する待望の論文集。
目次
第1部 トクヴィルと現代政治哲学(リベラリズムと共和主義の再統合―トクヴィルの遺産;トクヴィル復興の意味;トクヴィルと政治哲学の再生―大西洋両岸におけるトクヴィル;トクヴィルとネオ・トクヴィリアン―フランス・リベラリズムの過去と現在;代表制の政治思想史―三つの危機を中心に)
第2部 フランス政治哲学の可能性(メルロ=ポンティ/ルフォール―身体論から政治哲学へ;平等と自由の相克/相乗;保守主義と人権;政治哲学問題としての欧州統合;シティズンシップと境界線)
第3部 政治哲学から社会へ(労働と格差の政治哲学;中間集団と社会的なものの再編;社会的紐帯の政治哲学―トクヴィルを中心に;政治が社会的靱帯を語るとき)
著者等紹介
宇野重規[ウノシゲキ]
1967年東京都生まれ。1996年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所教授。専門:政治思想史、政治哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Mc6ρ助
4
素人には歯が立ちがたい。現代的な発展の図式の上に成り立った、従来の中間集団(労働組合や保険がある意味分かりやすかった)が結束力を失うなかで、人には時代に即した新しい絆関係、中間集団が必要で、さらに政治はそれらと適正な関係構築が求められている・・・。やっぱり、我々がなにをすべきかはよく分からない!『労働が社会的きずなを構成し、自己実現の回路となるのは、必ずしも人類の歴史を通じて妥当する心理ではなく、・・・その意味で労働をいかに社会に位置づけるかは、政治哲学の重要課題である。(p264)』これは目から鱗!!2016/08/24
Ra
3
宇野先生の専門であるトクヴィルを軸に、「人間が他の人間とともに生き、社会秩序を創造・維持していく営みを原理的に考察していく学問」である政治哲学的に現代社会を考察する論文集。正直、難しい。それもあって、『アメリカのデモクラシー』を読みたくなった。トクヴィルの原典を読んだ後に、本著に再挑戦したい。加えて、本著の論文はいずれも「3.11」前のものであるから、宇野先生の近著も確認したい。2017/03/05
chiro
1
政治哲学という分野は意識する事がなかったが政治を哲学として考察することの重要さをこの本を読んで認識できた。特にこの国には「社会」=「会社」という状態はまだまだ根強いしこれを変えていこうという動きも乏しい。その中で「会社」が「社会」を担えなくなってきている現実を政治が補う事を企図していない事にこの国の将来を考えたときに底しれない怖さを感じてしまう。それはこの国の国民性と相まってより強く感じてしまう。やはり、為政者には政治哲学をもって臨んでほしいと感じた。2023/01/27