出版社内容情報
先秦時代から西晋に至るまでの東アジア世界は、いかなる思想のもとにあり、どのような制度を備えていたのかーー政治史のみならず、文学や家族制度・性差、地方行政のあり方から日本を含む周辺諸国とのかかわりまで射程に収め、考古資料も駆使して新たな時代区分でダイナミックに描き出される「中華世界」の栄枯盛衰。
内容説明
先秦時代から西晋に至るまでの東アジアの世界は、どんな思想に支えられていたのだろうか。またそこにはどのような制度が備わり、いかなる社会が形作られていたのか。政治のみならず軍事制度、文学、また家族制度・性差、日本や中央アジアを含む周辺地域とのかかわりまでを射程に収め、「中華世界」の興隆から衰微までを新たな時代区分と「中華世界の重層環節」という視座のもとにダイナミックに描き出す。
目次
展望(中華世界の重層環節その一幕)
問題群(「中華帝国」以前;軍事制度からみた帝国の誕生―秦から漢へ;漢帝国の黄昏―前漢から後漢へ;漢人中華帝国の終焉―四夷中郎校尉から都督へ)
焦点(漢代地方官吏の日常生活;漢魏晋の文学に見られる華と夷;礼秩序と性差;楽浪と「東夷」世界―三世紀にいたる秘められた水脈;漢晋期の中央アジアと中華世界)
著者等紹介
冨谷至[トミヤイタル]
1952年生。京都大学名誉教授。専門は中国法制史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
89
第2回配本は、第5巻で中華世界の盛衰ということで殷周秦漢西晋の状況を俯瞰してくれます。漢の時代の行政機構などをわかりやすく悦明してくれているところが参考になりました(漢代地方官吏の日常生活)。「楽浪と「東夷」の世界」では日本のことについて触れられています。この全集は私にとっては若干難しいものですが楽しめる部分もあります。2021/12/31
MUNEKAZ
16
展望で華夷秩序の形成を論じており、中華と夷狄は敵対するものと捉えがちだが、そうではなく夷狄も古代の聖王の末裔であり、中華によって教化され取り込まれるものとして解く。それは帝国拡大の原動力となるとともに、後の崩壊のトリガーでもあったという皮肉な結果。また「名」の部分と「実」の部分を使い分ける功利的目的合理性は、現代中国をみても確かにあるよなと雑に思ったり。他に秦漢帝国の統一により生まれた地方官吏たちのネットワークが、動乱期の群雄割拠に繋がったというのも面白い。統一は見知らぬ他者を繋げ、分節化を生むのである。2021/11/17
ピオリーヌ
15
【展望】の冨谷至「中華世界の重層環節」より、「中華の重層環節的拡大は、中華の希薄化とそれによる消滅の過程である」『春秋公羊伝』に現れる、中華の夷狄に対する妥協なき差別観の凄まじさが印象的。「秦以外の諸国をも包括し、かつ少なくとも西周以降を通時的に展望しうる先秦史の復元が今後の課題である」「光武帝による材官等廃止によって、軍事訓練を受けた常備兵が郡国には存在しなかったため〰羌の大反乱等の際にしばしば反乱軍に敗北する結果となった。」2022/09/09
kenitirokikuti
12
図書館にて、古勝隆一「礼秩序と性差」の「二、性差はいかにとらえられたか――礼書が示す男女の差異」▲列子天端篇、男女の別、男は尊く女は卑し▲荀子非相篇、鳥獣に父子の関係はあるが、いつくしみはない。また牡牝あっても男女の別なし。ヒトにはある▲ 春秋左氏伝 荘公24年。女への礼物が、男のへの礼物と同じものだった。男女の別というけじめに乱している▲もとは婚姻の儀礼に関するもの。日本神話のイザナミ・イザナギの国産みで、柱を回ったあとどちらが先に声をかけるのが正しいのかってやつもそのたぐいか。2022/01/17
NAGISAN
2
異民族政権である清の時代の華夷思想に関心があるので、吉本道雅先生の春秋時代における「華夷思想の形成」に注目した。戦国後期以降、華夏の領域範囲が拡大したが限界に達し、異民族を撃退する「棄絶」か、その異質性を容認しつつ関係の維持を図る「覊縻」を選択。「同化」の堅持する硬直性と、状況によって「覊縻」と「棄絶」を使い分ける柔軟性を併せ持つ華夷関係の基本的枠組みが完成したとおっしゃる。現在の政権運営はどうなんだろうか?2022/05/28