内容説明
日本初のウェールズ小説集。炭鉱/戦争/女性/日常…。ウェールズに根ざした、でも私たちにとても近い5編の物語たち。
著者等紹介
河野真太郎[コウノシンタロウ]
専修大学教授。1974年山口県生まれ、一橋大学大学院商学研究科准教授を経て2019年4月より現職。関心領域はイギリスの文化と社会(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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M H
23
日本で初めてのウェールズ小説集。装丁に違わないどんよりとした雰囲気でイメージ通り炭鉱も出てくる。収録された5編とも解題があって助かる。時代は異なっても厳しい現実の見せ方が鮮烈な表題作と「ハード・アズ・ネイルズ」が良かった。よく理解できたとは言えないが、邦訳が少ない地域の作品が読めて嬉しい。2020/11/25
くさてる
15
イギリス西部のウェールズ、そこに根差した文学の短篇集。タイトル通り、なんとも鬱屈とした暗い雰囲気の話ばかり。それでも、第二次世界大戦中の女性が出会う「釣り人」との邂逅が幻想的で印象的なマージアッド・エヴァンズ「失われた釣り人」が、暗いなかにも独特の雰囲気があってよかったです。2020/10/24
チェアー
11
重い空気。埃っぽい空気。乾いた、それでいてどこか湿っているような空気。それはウェールズに特有のものではないが、一つずつが重なるとウェールズになっていく。 小説に結論はない。派手さもない。しかし日常がある。それは私と同じ質のもの。読んでいるうちに、知らない土地と歴史、空気が少しずつ染み込んでくる感じがする。 2020/11/04
まこ
11
ウェールズ地方を知ってもらうための短編集だからか自然や文化を前面に出した話が中心。人や土地の名前が独特でなかなか入っていかない。「ハード・アズ・ネイルズ」は現代を舞台にし、よそ者の排除がテーマ。一番周囲を排除してきたジョアナではなく、彼女から離れようとした主人公がとばっちりで外国から追放食らうのって皮肉効いてる。2020/08/10
センケイ (線形)
10
確かに暗い。しかし、意義深い話ばかりだと思う。一足速く産業化された国だからこそ、そこで起きた苦しい葛藤の歴史は、学びに満ちたものだと感じられる。思うようにいかない中で、私たちは何が出来るのか。思うように行かない結末を避けるために、そこから何が学べるのか。作者の体験も反映されたその歴史の層は、きっと私たちの道標になることだろう。2020/12/31