内容説明
失敗作と酷評される『東京暮色』こそ傑作であり、小津の本心が秘められている。戦前、モダニズムの洗礼を受け、戦後も一貫してその価値観で作品を作り続けたかに見える小津安二郎に隠された「悔恨」と揺らぎを、作品から掬いあげ、新しい小津像を描き出す異色の評論。『黒澤明の十字架』の補遺を通し、巨匠二人の戦争との関わりを鮮やかに対比した論考を付す。
目次
失敗作『東京暮色』の評価
『東京暮色』という映画
戦後世代の出現
戦後の小津は、なぜ延々と娘を嫁がせる話を作っていたのだろうか
震災からの帝都復興とモダン・ガールの時代
劇『思ひ出を売る男』と昭和初期の青春
エロ・グロ・ナンセンスの時代と『非常線の女』
「太陽族映画」の時代
小津の悔恨とはなにか 『東京暮色』以後の軌跡
『東京暮色』の喜久子という女性
小津安二郎の本当の「遺作」はどれか
同一の方向を見ること 相似形のアクションの意味
二人のエバラの巨匠―『黒澤明の十字架』その後
著者等紹介
指田文夫[サシダフミオ]
大衆文化評論家。1948年3月東京大田区池上生。1972年早稲田大学教育学部英文科卒。同年から2012年3月まで、横浜市役所勤務。1983年から「ミュージック・マガジン」に演劇評等を執筆。1991年ウォーマッド横浜を企画。2008年国連アフリカ開発会議記念イベント・高校生ミュージカル『やし酒飲み』を企画(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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