内容説明
ソヴィエト連邦の崩壊後に、“ポストモダニズム”をまとって出現した、新たなロシア文学。その多彩な潮流を足がかりに現代ロシア文学の歩みを一望する。気鋭の翻訳者による待望の現代ロシア文学論。
目次
序章 ロシア・ポストモダニズムとは何か
第1章 ポストモダン的「空虚」の諸相
第2章 現実とノスタルジーの狭間で―「新しいリアリズム」の台頭
第3章 ザハール・プリレーピン、あるいはポスト・トゥルース時代の英雄
第4章 再定義される社会主義リアリズム―エリザーロフ『図書館大戦争』
第5章 交叉する二つの自由―自由の探求から不自由の自由へ
第6章 アイロニーの終焉―ポストソ連ロシアにおけるチェチェン戦争表象
第7章 身体なき魂の帝国―マムレーエフの創作における「我」の変容
第8章 ナショナルな欲望の再(脱)構築―二〇〇〇年代以降のソローキン
終章 ロシア文学のゆくえ
著者等紹介
松下隆志[マツシタタカシ]
1984年、大阪に生まれる。北海道大学大学院文学研究科博士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
16
高校時代にドストエフスキーに熱中し、ソローキンをテーマに学位論文を書いたという1984年生まれの著者が、博士論文を基にその後の研究成果も踏まえて大幅に加筆修正して書き上げたいう本書は、2021年度日本ロシア文学会賞受賞作。ソ連崩壊後のロシアで多様化した文化や文学を、《ポストモダニズム》を軸に据えて読み解く試み。2022/05/10
garth
8
ドゥーギンとマムレーエフがいた「ユジンスキー・サークル」とはなにか。秘教学的にはそこが鍵になりそう。「交流は基本的に口頭で行なわれ、アパートでの朗読から成り立っていたが、この朗読会はある独特な宗教的秘儀へと変わっていった。そこには少しドストエフスキー的なものがあった。それは奇妙な魂の発現にも似て、どこに文学と人生の差があるのかを理解することすら困難だった」2020/09/02
KA
2
序章でメモを取りまくり、第一章の『ジェネレーション
』読解でもう満足。やっぱりヴィクトル・ペレーヴィンは天才だし、『ジェネP』は頭一個抜けてますよね。 そして読了。素晴らしい。「こういうロシア文学史を読みたいな」という欲望を満たしてもらった。あれやこれが足りないという指摘や注文は野暮だろう、著者がわかっている。この人にはまだまだ書くことがある。2020/03/02