内容説明
熊本には、心を休ませてくれる書店がある。地震後、新しい書店の変わらない日常。橙書店の365日。
著者等紹介
田尻久子[タジリヒサコ]
1969年熊本県生まれ。橙書店・オレンジ店主。『アルテリ』責任編集者。会社勤めを経て、2001年喫茶店orangeを、2008年橙書店を開店。2016年、作家・渡辺京二の声がけにより、熊本発の文芸誌『アルテリ』を創刊。2017年第三九回サントリー地域文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
82
著者の田尻さんは、熊本でギャラリーを併設し喫茶もできる新刊書店の橙書店・オレンジ店主。15年を過ごした場所から熊本地震を機に新店舗へ引っ越すところから始まるエッセイ。見開き2ページの約80篇は、本に囲まれ、雨音と猫のいる情景が立ち上がってくる。拾い猫、ご近所さんと本屋訪れる客との会話、縁を運ぶ人たちが幾人も登場する。時に唄会や朗読会を催し、文化の発信基地にもなっている。近所にこういう場所があったら、きっと入り浸っていることだろう。表紙絵を飾るのは、木版画家の豊田直子さん。2022/11/18
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
62
橙書店・田尻久子さんの本は今のところ3冊出ており、これで全部読んでしまった。なんか淋しい。本書は書店で是非実物を手に取ってもらいたい。とにかく美しい。豊田直子さんの版画の美しさはもちろんだが、祖父江慎さんのブックデザインの良さもある。そんな所に奥付が!と軽く驚く。エッセイは熊本の新聞に連載されたもので、全部2ページに収まっている。寝る前の読書にぴったりかも知れない。決してウケようとかしていない文章が綺麗である。この本の中に出てくる田尻さんが子供に教わった「淋しいのはいい事」という言葉が印象に残った。良書。2020/11/16
pohcho
51
西日本新聞に掲載されたエッセイ。ギャラリーと喫茶を併設する小さな新刊書店の何気ない日常に心癒やされる。雨漏りで店の本が濡れてしまい泣きそうになっていたら、常連さんが何冊も買ってくれた話はびっくり。開店十周年記念にと、わざわざケーキを持ってきてくれた人も。お客さんたちにとって橙書店はただの書店ではなく、心のよりどころなのだろう。心をこめて丁寧に仕事をする人がいて、その人を応援しながらその場所に救われる人がいて。本当に心洗われるようなエッセイだった。とてもよかった。2024/04/02
とよぽん
48
熊本で書店を営む田尻久子さんの、新聞連載エッセイをまとめた本。実は、「橙書店にて」を探して図書館に行ったが、田尻さんの本はこれしか在架してなくて借りて来た。短い文章の中に、来店者とのやり取りや日常生活で感じたこと、子供時代の思い出などが綴られ、とても温かく奥深い手ざわり感があった。滋養、という言葉がふさわしいような本。装幀、装画、紙質、しおりの材質に至るまで、行き届いた細やかな心遣いを受け取った。この1冊で私は田尻さんのファンになった。次は「橙書店にて」を読もう。2020/05/22
チェアー
18
熊本の山と海の美しさ、そして本屋がある街のしゃきっとしたたたずまい。 なんてことない毎日。それもだれかに支えられ、だれかのことを考えることで成り立っている。考えることは時にはつらいこともある。でも人を思う。本を通じて知っているあなたを思う。2019/06/07