出版社内容情報
西口 想[ニシグチ ソウ]
著・文・その他
内容説明
小説から紐解く公私混同(オフィスラブ)の過去~未来。オフィスラブの物語には、特定の時代や場所に生きる私たちの限られた生がぎゅっと詰まっている。
目次
なぜオフィスなのか?―よしもとばなな『白河夜船』
祖父母たちのオフィスラブ伝説―田辺聖子『甘い関係』
絶対安全不倫小説―東野圭吾『夜明けの街で』
忘れられた名前を呼ぶとき、オフィスラブが始まる―川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』
オフィスラブとセクハラの境界―綿矢りさ『手のひらの京』
私たちが同僚を好きになる不思議―長嶋有『泣かない女はいない』
近代家族と父娘関係の切なさについて―源氏鶏太『最高殊勲夫人』
東京ラブストーリーの貞操をめぐる闘争―柴門ふみ『東京ラブストーリー』
シングルマザーのオフィスラブ―津島佑子『山を走る女』
未来のオフィスラブはプラトニックである―雪舟えま『プラトニック・プラネッツ』
オフィスラブの魔法で人生はときめくか―津村記久子『カソウスキの行方』
オフィスラブと「私」の物語
著者等紹介
西口想[ニシグチソウ]
1984年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、テレビ番組制作会社勤務を経て、現在は労働団体職員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kana
33
日本のオフィスラブをテーマにしたブックレビューの連載をまとめた本作。単なる本の面白さの説明にとどまらず、なぜオフィスラブは最もメジャーな出逢い方の一つなのに少し後ろめたいものなのか、オフィスラブの描かれ方の時代の変化から女性の働き方の変容がどう読み取れるかなどを紐解いていくスタイルが奥深い。こういう身近だけど十分に吟味されてない社会現象をテーマに世の中を見ていくのは楽しくて好きです。構成に荒削りな印象を持ちましたが、最後に著者の母と自身の生い立ちを原点とする本作執筆への想いが語られるのが熱くて良いです。2021/12/30
原玉幸子
20
著者との世代間ギャップを乗り越えて大丈夫だったのは、私が、同胞であることが恋情に転化する本書のテーマが分かるが故で、職場恋愛は権力と結び付いている(労務的にはアウト!)との指摘を含めて面白く読みました。同胞と恋情の視点を、社会人類学と進化生物学に還元、或いは「何故恋をするのでしょう」と哲学的に読み解こうとすると野暮になるのも必至なので、社会現象への批判の目とふわふわとした感覚の境目で読むのが丁度いいと思います。柴門ふみ『東京ラブストーリー』以外は、著者には馴染みでも未読の小説でした。(◎2021年・秋)2021/09/18
kenitirokikuti
8
紙屋高雪氏のブログ 2019-04-20 で知る。マネたまというサイトに連続掲載された「オフィスラブ小説論」をまとめたもの。著者は「労働団体職員」で、たぶんPOSSEのひとだろう。その前はテレビ番組制作会社に勤めており、ああいうところには若い娘に手を出すオジサンがたくさんいるのだが、彼らは「(愛のある家庭を築けなかったため)損をした」と考えているそうな。著者もテレビマン時代には、「働き方」には無頓着だった、という。2019/05/05
つるる
7
オフィスラブを描いた小説や漫画作品から、日本の労働を考える。軽くするする読める文体なのにエピソードがきちんと心に引っかかりを残していく、いろいろと考えさせられる本だった。よしもとばななや田辺聖子、東野圭吾、川上弘美、綿矢りさ、長嶋有、津村記久子の掲載作品は読んだことのある話だったけれど「オフィスラブ」という共通点にはまったく気がつかなかった。個人的にはOLの以前の呼び方がBG(ビジネス・ガール)だったという点にびっくり。「ビージー」って読むのかしら。濁点がゴツい…。数年後にはOLもダサい言葉になるのかな。2019/12/17
T66
6
どこかで紹介されてて、タイトルのしょうもなさが気になってしまい図書館で。が、予想以上に面白かった。職場の「公」と恋愛の「私」の境界を侵犯するのがオフィスラブ。それがオフィスラブの「言えなさ」、と。なるほどー。恋愛より、割と真面目に職場問題に寄ってたような。例に上がる作品はどれも面白そう!読んだことがあるのは1つしかなく、残りはほぼ図書館で予約しました。なんと「東京ラブストーリー」も図書館にあるとは。ちなみに既読は「夜明けの街で」でした。読んだ時モヤモヤした理由がようやく分かってスッキリでした。図書館本2019/09/14