内容説明
旅と遭遇こそ、未完の近代にとって決定的に重要な場である。だれもがいま、移動している。数世紀のあいだ移動しつづけ、「旅のなかに住まう」ことを実践してきた。移動によって分節化される人間の差異、絡まりあった文化の経験、ますます密接に関連しながら均質ではない世界の構造と可能性について―根源と経路の経験を描く。
目次
旅(旅する文化;メラネシア人のなかのゴースト;空間的実践―フィールドワーク、旅、人類学の制度化 ほか)
接触(北西沿岸の四つのミュージアム―旅の反省的考察;パラダイス;接触領域としてのミュージアム ほか)
未来(牡羊の年―ホノルル、一九九一年二月二日;ディアスポラ;移民 ほか)
著者等紹介
クリフォード,ジェイムズ[クリフォード,ジェイムズ][Clifford,James]
1945年生まれ。カリフォルニア大学サンタクルーズ校教授
毛利嘉孝[モウリヨシタカ]
1963年生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究院助教授。専攻は社会学、文化研究、メディア論
有元健[アリモトタケシ]
1969年生まれ。ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ社会学部博士課程。専攻は社会学
柴山麻妃[シバヤママキ]
1971年生まれ。九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程単位取得退学、現在『New Theatre Review』編集長。専攻は文化人類学
島村奈生子[シマムラナオコ]
1973年生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府博士課程。専攻は人類学、ラテンアメリカ研究
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感想・レビュー
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SQT
1
二段組でとにかく長いけど、重要な視点が多くて勉強になる本だった。文化人類学と旅を隔てているものが、居住(への意識)だけど人類学のフィールドで観察される人たちも、西洋社会へ出稼ぎとかで旅しながら暮らしているわけで、旅(移動)に焦点を当てた方がいいという話とか、西洋から持ち込まれたものが人類学的な見地を持った博物館では展示されなくて、実際に現地の人はそれを自分たちのオリジナルな生活様式として取り入れているという異種混淆性を無視してしまっているとか。フィールドをハビトゥスとして見るとか、かなり使えそうなのも2017/04/13
★★★★★
0
広義の旅や博物館などを題材に移動と接触の営みを考察することで、「文化」「民族」といった一見自明な概念に疑問符を付し、「我々」と「彼ら」の関係性を問い直してゆく論考。論文のみならず日記や詩的な散文なども含み込んだ、経路と根源をめぐるメタ人類学的コラージュです。面白かった。2011/07/22