内容説明
ある晩かかってきた一本の奇妙な電話。北川健と名乗るその男は、かつて私=秋間文夫の親友だったというが、私には全く覚えがなかった。それから数日後、その男の秘書を通じて、貸金庫に預けられていた一枚のフロッピー・ディスクと、五百万の現金を受け取ることになった私はフロッピーに入っていた、その奇妙な物語を読むうちにやがて、彼の「人生」に引き込まれていってしまう。この物語は本当の話なのだろうか?時間を超えた究極のラブ・ストーリー。
著者等紹介
佐藤正午[サトウショウゴ]
1955年、長崎県佐世保市生まれ。北海道大学文学部中退。『永遠の1/2』で、すばる文学賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
207
ままならないのが人生…完璧な人生などあり得ない。何かを求めても、何かは捨てるから。人生は選択の堆積で出来ている。【Y】の文字に譬えた分岐点に思いを至らせ、選択肢を変えていたらもっと良い人生になっただろうかと想像を巡らす…だがそれは幻想に過ぎない…何かを得たら、何かを失うから。レトリック的映像効果を狙ってか、トリュフォーの映画シーンが過度に挿入される。映画を観ていない僕には効果は薄かったのだが…。アイロニカルな語り口調とは裏腹に、文章はまどろっこしく煩雑感が否めないが、ミステリアスさに惹かれ捲る手は速まる。2020/05/08
相田うえお
153
★★★☆☆17097 Yね!人生の分岐点で右に行った場合と左に行った場合、間違いなく違う人生になるんでしょうね。そんなタイムスリップ系の話です。プロローグを読んだ段階で面白くなりそうな予感がしたんですよ。ただ、パラレル型の時間軸がややこしくて難儀したのと、先が気になるのに冗長な説明が焦れったくて。。もう少しリズム感ある流れでテンポよく話が進んだ方が読みやすかったんですけどね。まぁ楽しめました。本作品の様な信じられない事が起こった時、どんなに説明しても信じてもらえなかったら本当にもどかしいでしょうね。2017/09/25
hiro
133
佐藤正午作品は初読み。TV番組「宮崎美子のすずらん本屋堂」でこの本が紹介され、好きなタイムスリップ物ということで読んでみることにした。18年前の鉄道事故に大きな悔いを残す北川が、その18年前にタイムスリップしたことによって、人生が変わってしまう人たち。その2度目の18年間を過ごした北川の親友だった秋間の目線で物語は進んでいく。帯には「渾身のラブ・ストリー」とあったが、北川のタイムスリップにより、人の人生を変えることができても、北川の思い描いたようにならない。その意味では「切ないラブ・ストリー」だと思う。2014/05/13
ehirano1
132
#フロッピーディスク登場で時代を感じる話。#最初ゴチャゴチャしていて混乱しがち。これも著者の狙い?#唐突な展開にページをめくる手が止まらない。#『Y』とはそういう意味ね。#伊坂幸太郎さんの作風を感じるのは気のせい?#複雑に感じるも、最後はシンプルに収斂する手腕は流石!2019/11/09
zero1
106
もしあの時、別な選択をしていたら。18年前の鉄道事故をきっかけにした別な人生について秋間と北川が悩む。題名こそ出てこないが「リプレイ」(グリムウッド)の影響が色濃く出ている。「リピート」(乾くるみ)や「11/22/63」(S・キング)も読んだが、柳の下に二匹目のドジョウはいない。しかも本書は終盤が「説明」になっていて質を低下させている。小説も縮小再生産?素朴な疑問だが鉄道会社に電話したら事故は防げないものか?トリュフォーの映画が何度も登場するが、私には「付け足し」のように感じて物足りなかった。2019/02/25