内容説明
下高井戸オリンピック遊戯場は場末のうらぶれた遊園地だった。しかし双子の兄弟藤島宙一・宙二の天才的な経営手腕と絶妙のコンビネーションにより信じられない急成長を遂げ、ゼウスガーデンと名を変え、ありとあらゆる人間の欲望を吸収した巨大な快楽の帝国となっていった。人類の欲望と快楽の狂走の果てにあるものを、20世紀末から21世紀末の歴史空間を通し、壮大なスケールで描いた三島賞作家の最高傑作長篇に、新たに「ゼウスガーデンの秋」を加えた永久保存決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とも
36
★★★★☆面白い。SF的側面、国や企業の衰亡史としても、ゼウスガーデン(遊戯場)のアトラクションの発想としても、権力の権謀術数やかけひきとしても楽しめる。2017/02/18
メタボン
31
☆☆☆☆ ゼウスガーデンが膨張していく過程が面白い。この作品が発表された当時は、ポストモダンが流行し、小林恭二や高橋源一郎のメタ小説にわくわくしていた。今読んでも色あせない面白さ。ただ権力闘争に明け暮れる終盤はまさしく衰亡史の名のごとく、物語も急速にしぼんでいってしまい、読後の脱力感は何とも言えなかった。すっかり作品が出なくなった小林恭二だが、この頃のような荒唐無稽な作品を書いてほしい。2018/09/13
山田太郎
28
こういう年代記はものすごく好きな自分の嗜好だなと。アイドルでこういうのやったらおもしろいかなと。AKBの真似みたいになっちゃいそうだが。もうすぐトップで君臨しそうだったけど、男関係で九州島流しになったが、謀略をつくしてトップ返り咲き、グループ抜けても裏から支配するみたいな、なんか聞いた話かこれ。西東しゅらがいいなと。2020/03/14
志ん魚
18
ローマ帝国をはじめとする、醜く血塗られた権力闘争の歴史を徹底的にパロディ化し、下高井戸に再現(笑)。さらにバブル期ならではの快楽至上主義の狂騒、そして得体の知れない熱を帯びた著者一流のグロテスクな美の探求等がちりばめられた、超ブラックなクロニクル。ゼウスガーデンの異常な発展ぶりをはじめ、カニバリズムだの肉体改造だのと、こちらの予想を上回り続けながら果てしなくエスカレートしていく疾走感がたまらんです。しかしこんなイケイケな作品だとは思わなかった(笑)。2012/01/13
本 読むぞう
15
これはおもしろいです、際限なく肥大し、日本から独立した絢爛たる巨大遊園地の、およそ百年に及ぶ一大興亡史、 パノラマ島奇談的箱庭世界、清涼飲流水を彷彿とする奇妙な名前の奇人、怪人、狂人たちの、果てしない欲望、堕落、腐敗…、 そして最後は一抹のさびしさと深い心の闇2014/07/31