出版社内容情報
「受精卵は、胚盤胞と呼ばれる中空の丸い玉になり、子宮壁のうち最も手近なところに付着する。そして酵素を分泌し、付着した部分の子宮壁を侵食していくのだ」.....。(立花隆『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本 そしてぼくの大量読書術・驚異の速読術』241頁、より)
内容説明
子どもが胎内に宿った瞬間から、母と子に利害の対立が生じる。子どもは他の誰のためにでもなく、自分自身のために発達をとげようとする。親もまた、親自身の利益をはかろうとする。人類進化の歴史は、母子間の葛藤の歴史でもあった。人類進化の途上において、子どもはどのような問題に直面し、それに対して、どう対処してきたのか?本書は、子どもという視点から人類進化をとらえなおした、新しい試みである。
目次
セックスはほんとうに必要か?
卵子と精子
何人産むのが適当か?
反乱
ゆっくりとゆっくりと
ごく初期のこと
四カ月まで
裸のサル
性器と乳房
最初のトラブル〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koichiro Minematsu
46
本著に示された母親のアンケートによれば、「赤ん坊は母親から、いやになる程長い時間を奪い取る」と答えている。社会的感想に捉えると、愚痴みたいに思ってしまうが、人類進化の道筋であると気づかされると、子育て放棄や虐待、学級崩壊もうまれないだろう。ただ、そうは言うものの周囲からの個人的・社会的支援が重要な世界になってしまっていることは否めない。子宮の中のエイリアンは、子育てについて総合的に深い探究ができる本でした。2019/12/30
takao
2
ふむ2023/06/28
オコジョR
0
21年振りの再読。進化生物学の本で原題は「The Descent of the Child」。邦題はセンセーショナリズムに走りすぎだと思う。進化における母と子の利害対立を論じたもの。 男女の関係にしても、本来は――自然状態としては――調和している筈だなどと、根拠もなく思われている向きがある。本当は自己の利益を求める個体が、当然ながら対立も妥協も含めて、他者に対応してきた。それぞれの時点で、その時点での「均衡」があるのが「自然」だ。 母子関係も決してその例外ではないことを論じた本。ああ、字数制限がきつすぎ。2020/11/06