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内容説明
第二次大戦下、親元から疎開させられた6歳の男の子が、東欧の僻地をさまよう。ユダヤ人あるいはジプシーと見なされた少年が、その身で受け、またその目で見た、苛酷な暴力、非情な虐待、グロテスクな性的倒錯の数々―。
著者等紹介
コシンスキ,イェジー[コシンスキ,イェジー][Kosinski,Jerzy]
1933‐1991。1933年、ポーランドの工業都市ウッチに生まれる。ユダヤ人の両親をもつが、第二次大戦勃発後カトリックの洗礼を受けるなどして、ナチスの迫害を逃れる。ウッチ大学卒業後、ポーランド科学アカデミーの研究員となるも、1957年、アメリカに亡命した。1965年、『ペインティッド・バード』を刊行し、センセーションを巻き起こす。同書は発表当初からバッシングにさらされ、近年ではゴーストライター疑惑や盗作疑惑がもちあがるなど、大いに物議をかもしつつ、現在に至るまでロングセラーとなっている
西成彦[ニシマサヒコ]
1955年生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専攻は比較文学、ポーランド文学。著書に『耳の悦楽―ラフカディオ・ハーンと女たち』(紀伊國屋書店、2004、芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
本能として生きようとするのだと思う。それが人間の本質なのかもしれない。ナチスの迫害から逃れるために両親が遠くへ託した6歳の子供。かれは、五年以上も流離った。その途中で、人々から蔑まれ、暴力を受け続ける。彼は辛いとは言葉に出さないが、吐き出されない苦しさは彼の言葉を奪う。読んでいて始終頭にあったのは、アゴタ・クリストフの【悪童日記】を何度も思った。あちらはフランス語で書かれてはいても、やはり東欧文学の系統であるのだろう。2016/12/24
モルク
99
映画「異端の島」の原作本。ポーランドでは発禁となったいわくつきの本。第二次世界対戦が始まって間もない頃、6才の主人公は両親が旅人に金を渡し東欧の大都会から疎開するが…。里親はすぐに亡くなり少年の旅が始まる。まわりとは異質な黒髪、黒い瞳そして浅黒い肌からユダヤ人やジプシーに間違えられ、どこへ行っても差別され虐待を受ける。逃げ出してはまた次の地へ。そして異物である少年を攻撃し続けるのが普通の農民というのが恐ろしい。少年よ、よく生きた!あとがきの、父との話は泣けた。グロくエロい描写あり。2021/05/21
扉のこちら側
95
2017年147冊め。【281/G1000】ナチスの手が迫る東欧の国で、疎開させられた少年がその容貌故にジプシーかユダヤ人かと追われ続け、さまよい歩く中で目にしたもの。タイトルは作中で明かされているが「白い鳥の中で一羽だけの異端者」という、少年自身を暗喩したもの。白人の村々で、肌の色の違う少年一人だけがペンキまみれの異物として排除される残酷さ。(続)2017/02/13
Vakira
81
僕に危害を加える存在。そんな者はいなくなればいい。永遠に・・・それは相手の命を奪う事。知らぬ他人なら死んでしまえばいい。被害者は加害者に成り得る。戦争中だった。子供を田舎へ疎開させる商売があった。商売だから情はない。疎開先は貧困で不衛生、不愛想な知らない婆さんの家。それでも6歳の少年は健気に生き様とする。しかし、婆さん死んでしまえば知らない世界。村に行けば疫病神扱いで殺されかける。逃げよう。何処に行けばいい?ドイツ軍も恐ろしいが、出会う村の人々が恐ろしい。実は子供達、意外に残酷だ。その暴力は容赦ない。2021/02/11
蘭奢待
50
宣材ポスターが印象的な映画「異端の鳥」の原作と知り読んでみた。映画はまだ見ていない。 対戦中に親とはぐれ東欧の農村で一人疎開状態になってしまった10歳にも満たない少年。皆とは異なる容姿であったことから、農民から差別され、搾取され、迫害され、虐待される毎日。全編を通じて全く救いのない残虐さと、どす黒い空気感。著者後書きまでも救いがない。 2021/03/06