内容説明
彼等は鼠のように遊んだ。少年たちの秘密の隠れ場。ある日、一人が盗んだ石膏の女の人形を持ち込んだことで、何かが変わっていく。堀辰雄の名作が、大人気イラストレーター・ねこ助によって、鮮やかに現代リミックス。人気シリーズ「乙女の本棚」の第26弾が登場。小説としても画集としても楽しめる魅惑の1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
93
乙女の本棚シリーズ。空家の梁の上に畳を敷き詰め、かび臭い屋根裏部屋を作った少年たち。少年たちはそこを秘密の隠れ家にして遊ぶ。タバコを回し飲みし盗んできた石膏のビーナス像をもてあそぶ、鼠のように。石膏像が壊れ、白いかけらが残された部屋に、白い幽霊が出るという。少年たちは屋根裏部屋を捨て新しい秘密の場所に移る。ひとりの少年だけが、母を亡くした悲しみを抱えその部屋でこっそり涙を流す▽絵が美しく耽美な世界。2023/01/13
紫 綺
58
図書館の新着コーナーにて。悲哀話と美しい絵が不思議な雰囲気を醸し出す。堀辰雄の小説「鼠」と、ねこ助の描き下ろしイラストとの珠玉コラボ。小説としても画集としても楽しめる小振りな一冊。2022/09/03
ちえ
39
空き家の物置小屋に少年たちが作った屋根裏部屋。昼間でも薄暗いそこで毎日学校が終わるとこっそり集まる彼ら。”鼠のように遊ぶ”という表現がいかにも秘密めいてうっとり。幻想的で退廃的な絵が文章とあわさり薄暗く秘密の香りがする。「風立ちぬ」「美しい村」を昔読んだ堀辰雄。こんな魅力的な掌編もあったのか。2022/12/04
たまきら
37
少年の閉所への執着はネズミのようでもあり、同時に子宮回帰のようでもあり。エディプスコンプレックスといった感じで、自分的にはちょっと人の自慰を見せられているような居心地の悪さがありました。でも、イラストと文章はすごくマッチしていて、作品としては素敵。単純にこういう男のファンタジーを「乙女の本棚」で読むことに飽きてきてしまった自分がいるだけな気がします…。2024/01/08
gtn
35
屋根裏には少年の魅力が詰まっている。先ず、大人に秘密の空間であること。それから、胎内のような安心感があること。中には、その世界を独占しようとする者がいる。やがて、その少年は、良き思い出と現実の見境が分からなくなり恍惚となる。大人も然り。そんな逃げ場所が必要な時もある。2023/08/08