内容説明
記憶の描かれ方を読み解く。博物館や記念碑、小説や映画で描かれる社会主義の記憶の光景。体制転換後の急速な社会変化への不安・不満が社会主義へのノスタルジアを生んでいる。社会主義建国神話に積極的に用いられた「紅い戦争」に着目し、肯定的な記憶と抑圧された記憶について各国の事例を検討する。
目次
序論 紅い戦争のメモリースケープ―ソ連・東欧・中国・ベトナム
第1部 抑圧された記憶と周縁化された身体(ロシア・ベラルーシの戦争映画における敵のイメージ―アレシ・アダモヴィチ原作の映画を中心に;封印された戦争の記憶―ベトナムにおける中越戦争の記憶;ソヴィエト・ロシアのプロパガンダにおける女性図像と象徴性―社会主義国家の建設から総力戦体制へ;「救国の妓女」を描く中国映画―社会主義文化における女性の身体と国家の想像)
第2部 紅い戦争の記憶の行方(紅い刑事ドラマとチェコスロヴァキアの社会主義―テレビによる同時代史の構築;中国における紅い英雄―メモリースケープとしての烈士陵園の分析を通して;記憶の展示―パノラマ・ジオラマによるメモリースケープ;記念碑の存在論―ポスト・ソヴィエト・ロシアのメモリースケープを望んで)
著者等紹介
越野剛[コシノゴウ]
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター共同研究員。ロシア文学
高山陽子[タカヤマヨウコ]
亜細亜大学国際関係学部教授。文化人類学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nobuko Hashimoto
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記憶と継承に関わる授業で使えるかなと、ざっと目を通す。博物館、記念碑、作品で描かれる社会主義の記憶の光景を考察した論集。各章で取り上げている事例は具体的でたいへん面白いし、分析もふむふむと勉強になるのだが、そもそもの用語の定義や説明がもう少し必要に感じた。読みづらい文体が放置されている感のある章、図がもう少し欲しい章も。全体に、読む側で補わなくてはならないという印象。もっと親切な文献のあとに、具体例として関心の持てるところを読み、わかりづらいところは自分で別の文献で補うという流れで活用するのが良いかも。2020/10/20