内容説明
書くために生きたのではなく、生きるゆらぎを書いてきた。そして40年…。ことばが、からだが、しみじみ深呼吸する。最新エッセイ集!作家生活40年記念出版。
目次
1(誠実な作家・坂口安吾;手に職・お金 ほか)
2(早春;夫婦 ほか)
3(縁を活かす;氷上釣り ほか)
4(天狗岳へ;『医学生』・作者の弁明 ほか)
著者等紹介
南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県に生まれる。東京都立国立高校、秋田大学医学部卒業。現在、長野県佐久市に住み、佐久総合病院非常勤医。81年、内科医として難民救援医療団に加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第53回文學界新人賞受賞を知る。89年「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞。2008年『草すべり その他の短篇』で第36回泉鏡花文芸賞を、翌年、同作品で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
109
「落葉帰根」タイトルに惹かれた。若葉は陽の光を浴びて青葉となり、やがて黄葉の時を迎え、散り落ちた落葉はいつしかもとの根に帰る。誰もが老いて自然に還ってゆくのだ。本作は、南木さんの作家40年を記念して出版されたエッセイ集。信州の総合病院の勤務医として激務をこなし、芥川賞受賞翌年にはパニック障害発症、その後10年余り鬱病に苦しみ続けたという。夫人と共に登った山々の自然に息を吹き返し、生と死を真摯に見つめた作品を世に送り出す。きっと南木さんという落葉は私たちの心にも舞い落ちて、静かに深く根を張ってゆくのだろう。2022/03/18
kaoru
78
信州の佐久病院で診療を続けながら小説を書いてきた著者のエッセイ集。37歳で芥川賞を受賞するもパニック障害と鬱病を発症し、それでも何とか「二足の草鞋」をこなしつつ65歳で勤務医としての定年を迎えた。地方病院での勤務と山登り、同じような内容にも拘らず惹きつけられるのは著者が生と死を見つめる濃密な時間を生きてきたからだろう。芥川の心身の不調を医師として分析し坂口安吾の誠実さを尊ぶ。「もう偉そうなことは言わない。『わたし』は『からだ』だ」。「落ちた葉は根に帰る」現象で次第に小児期に帰ってきている、と書かれるが→2021/10/25
キムチ27
54
体裁は文庫本、なのに装丁が立派な単行本。愛蔵版の面持。読了は思いの外時間を要した。南木作品が好きだがこれは同じ呟きが何度も繰り返され 少々辟易。多方面から頼まれた依頼文を1冊に纏めるとこうなるだろうね。南木氏の性格からして等身大、身の丈の周辺状況を語るがモットーだろうし、個人情報が絡むのはフィクションにしても語るのを好まないのだろうし。山、妻と暮らす日々、生まれ育った在‥そこには浅間山、草津白根、四阿山等の眺めが。落葉帰根。いい言葉。南木氏の心に有る普遍的な想いだからこそ、何度も繰り返されるのだとの感慨2020/08/17
けんとまん1007
41
いろいろなところに発表されたエッセイ集。重複するところも多いのだが、あまり気にならない。かえって、深みが増すような味わいがある。何気ない日常に眼を配ること、これが、なかなかできないこと。だからこそ、命あることのありがたさが伝わってくる。山あり谷ありの営みが、普通のことであって、それすらありがたこと。2020/08/04
pirokichi
22
作家生活40年目に出された小ぶりで素敵な装丁のエッセイ集。重複する内容が多いが、この歳になると、繰り返された方がありがたいというか、心にちゃんと入ってくるみたい。「いつからか四股を踏むことを覚え、股関節が柔らかくなって石をまたぐのも容易になった夫は、からだの余力のぶん、黙って待っていられる」。四股を踏む場面が何度か出て来て新鮮。気もちよさそう。2021/02/27