内容説明
日清戦争の凱旋碑だった広島の平和塔。第二次大戦後、水族館やダンスホールに転用され、今は模造品の砲塔がのった戦艦三笠。ある時代には主役だった物も、忘れられ、書き換えられ、時に埋もれている。そんな隠された近代日本の記憶を、現場を歩き、資料をもとめ、探る歴史ルポルタージュ。
目次
1 戦争が見える
2 動かぬもの
3 人はなぜ肖像を求めるのか
4 奇なるもの
5 日本美術最高、じゃなくて再考
著者等紹介
木下直之[キノシタナオユキ]
1954年浜松市生まれ。東京芸術大学大学院中退。日本美術史。兵庫県立近代美術館学芸員、東京大学総合研究博物館助教授を経て、2000年から東京大学大学院文化資源学研究室助教授となる。見世物、造り物、人形、写真、お城など、美術史のなかからこぼれ落ちたものを丹念にひろいあげ、美術の枠にとらわれない評論や研究に取り組んでいる
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感想・レビュー
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horuso
4
広島の凱旋碑がいつのまにか平和塔になっているのをはじめとして、世の途中から隠されていることの数々。私たち日本人が異常なまでに忘れっぽいことを如実に物語る異なもの珍なもの。テーマは非常に興味深いのだが、求心力がないというか、テーマからかなり外れた話題もあれこれ出てくる。一つの雑誌に連載した文章だけで構成されていないので無理もないか。このテーマなら、もっと体系化された論文として読みたかった。近代日本の興味深い話のあれこれとして読めば不満はないのかも。神戸ネタが多いのは、出身者としては親近感が湧いて楽しかった。2017/05/12
movingtoomuch
2
ここのところ明治時代がマイブームにつき。それにしても面白い。日清・日露戦争時代って本当に忘却の彼方やな。日本人の驚くばかりの忘れっぽさがすさまじすぎて言葉を失う。あるものは移動し、あるものは引き倒され、あるものは「平和のモニュメント」に姿を変えた、かつて無数に屹立していた戦勝記念碑たち、勇ましい外征称揚気運、宗主国気分の哄笑、伝説化してゆく龍馬、美術以前の絵画や古物、失われてきた身体性……諸々諸々。著者が兵庫県近代美術館学芸員時代に起稿された作につき神戸ネタが多いのも嬉しい。金山平三に初めて興味を持った。2017/04/21
shrzr
0
銅像に囲まれて暮らしているが、当然のように何とも思っていない。無用のものこそ美術だと無意識にそう信じている。そうやって隠れて(隠されて)しまっているものをふらふらとみつけだしていく。2021/05/23
tkm66
0
大変面白かった、との覚え。その後の著者の活躍はご承知の通り①2002/05/24