内容説明
今世紀の物理学上の最大の発見「核分裂」を初めて理論的に証明した原子物理学者、リーゼ・マイトナー。女性が研究所に足を踏み入れることすら許されない時代に、リーゼは黙々と実績を重ね、カイザー・ヴィルヘルム研究所学部長として敬愛を一身に集めた。だが1938年、ユダヤ人ゆえに、ナチによってドイツを追われる。亡命生活の絶望と孤独。共同研究者オットー・ハーンの受けたノーベル賞に名もあげられない不遇。自らの発見が「原爆」をつくりだす結果を招いたことへの苦悩。時代の波に翻弄されながらも、科学への情熱と純粋な理想をつらぬいた一人の女性科学者の生涯を、感動的に描く。
目次
1 典型的な良家の子女
2 はたして科学者になれるだろうか?
3 屈託のない年月
4 物理学者としては何ひとつやましさがありません
5 科学者になる
6 ユダヤ人の女が研究所を危うくする?
7 核分裂の発見と証明
8 亡命生活―まるで砂漠で暮らしているようです
9 わたしは原爆製造に関わりませんでした
10 晩年の栄誉
補説 原爆が失敗するよう願っていたのに…
リーゼ・マイトナーの受けた称号と賞