内容説明
舞台は二万年前のシベリア南部。後期旧石器時代の狩猟採集をいとなむ一部族の娘がヤーナン。一族は冬から夏、夏から冬へと猟場を変えて荒野を移動する。そのなかで、ヤーナンは少女から女へと成長し、やがて一族の男と結婚する。父母との訣別、幼い妹への愛情。野性のオオカミとの不思議な交流。女流人類学者が、太古の人間たちの生活を描く感動的な小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
びっぐすとん
15
ハードカバーを躊躇なく買ってたリッチな20代OLだった頃に買った本。本業は人類学者という著者が書いた旧石器時代の女の一生の物語。自粛期間中、手元にあったので再読。上橋菜穂子さんもそうだが、知識に裏打ちされているせいか、獣や土の匂いがしてきそうな感じ。当時の正確なことはわからないけど、今と比べ物にならない厳しい生活の中、人間の力の及ばないことは精霊や先祖の力を借りて生きていたんだろう。あっけなく死んでしまうから、死後の世界があると思わなければ生きていけなかったのかも知れない。下巻もそのうち読み返そう。2020/06/26
びっぐすとん
13
当時表紙にひかれて購入。今でこそ『月神の統べる森で』や『大地の子エイラ』などを読んで経験値が上がったが、当時はいきなり精霊が出てきて少し戸惑った。荒削りな部分もあったが、大自然とともに生きる石器時代の女の一生に感動もした。『大地の子エイラ』のようなハーレクイン要素はなく、厳しい環境にすぐ死ぬ弱い生き物ヒトの生き方をひたすらに描いた作品で『エイラ』より私は好き。読メでは読者が少なく残念。ヤーナンの母親が産後肥立ちが悪く死を覚悟しながら歩き続ける姿、母親が死ねば当然赤子も育たない石器時代に衝撃を受けたなあ。
minomushi
2
トナカイ月というタイトルは松岡正剛の千夜千冊で知ったのだが,このタイトルがたいへんに気に入って本の紹介すらあえて見ずに、すぐに探して古書を入手した。その『トナカイ月』というひびきにはなんとも神秘的な、ふしぎなかがやきがあり、澄み渡った濃紺の夜空にしずかに冴えるトナカイの角のような月を連想したものだ。だけれど読まずに3年ほど経った。そうしてついこの前、トナカイ月を開いてみたらば、たちまち物語の持つ凄まじい引力で、自分はヤーナンの住む処へ飲み込まれてしまったのだった。 2022/01/26
セシリー
1
かなり昔に書評にて別の本(「大地の子エイラ」シリーズ)と似た雰囲気みたいだったので、読んでみたいと思っていた。人間関係が複雑な上に過去と現在が交錯して話が進むのでややこしかった。食料確保の苦労や自然の脅威、出産で亡くなる登場人物などを見ていると、現代日本に生まれたのは本当に幸運なんだと思えてきた。特に自分が子どもを持ってから読んだ本で、出産があったものは初めてだと思うので、子どもがいない時とは本を読んでも見方が違うな~とも思った。下巻も読みます。2012/06/27
takao
0
うーん2016/09/22