内容説明
二十数年にわたり、北海道で森林の保全と更新にたずさわってきた著者は、自らの観察と実験をもとにして、虫媒・風媒を問わず、自己の遺伝子を後代に伝えるための競争・共存のメカニズムを追求するとともに、諸外国の大量の文献をも入念にチェックして、本書をまとめ上げた。対象を学生にしたため文体は平易であり、関係の研究者にとっても見逃せない力作となっている。植物社会の進化に迫る嚆矢の書。すべての花が実をつけるわけではなく、すべての実が実生になるわけでもない。動物社会を遺伝子レベルで考察し、その包括適応度などをもとに進化の実態に迫ってきた行動生態学は近年ようやく植物分野にも適用され、受粉、性選択、果実・種子の散布などが、新たな見地から見直されつつある。本書は、そうした状況のなかで刊行されるわが国最初の植物社会生物学の本格的テキストである。
目次
第1章 花・受粉の生態学
第2章 植物の性
第3章 植物における性選択
第4章 果実・種子の散布