内容説明
『万葉集』はいかにして「国書」の王座についたか?“天皇から庶民まで”が参加し、“日本民族の原郷”といわれる『万葉集』。しかしこの歌集が「古典」となったのは、国民国家の成立を補強するためであった。新元号で脚光をあびる「万葉集」について画期的事実を解明した書。緊急重版。
目次
第1章 天皇から庶民まで―『万葉集』の国民歌集化をめぐる問題系(国民歌集の構造;子規の再発見という通念;金属活字版『万葉集』の出現;一八九〇年という画期;国民の全一性の表象)
第2章 千年と百年―和歌の詩歌化と国民化(国民歌集の前史;『新体詩抄』と和歌改良論;国文学と国民文学;子規のスタンス;国民歌集と国民教育)
第3章 民族の原郷―国民歌集の刷新と普及(民謡の発明;万葉びとの創成;異端者伊藤左千夫;教育者の聖典―島木赤彦の万葉集1;伝統の発達―島木赤彦の万葉集2)
著者等紹介
品田悦一[シナダヨシカズ]
1959年群馬県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程(国語国文学)単位取得修了。上代日本文学専攻。現在、東京大学教授(大学院総合文化研究科)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サトシ@朝練ファイト
23
予想以上に難しかった〜、再読要だね。再刊のあとがきで、「令和」の典拠を万葉集に求めたとのアベ総理の談話から瞬く間に再刊の運びとなり総理に対して感謝の言葉を述べられていますが、「談話の内容に賛同する気はさらさらありません」と結ばれています。(笑)2019/09/02
わたなべよしお
19
うーん、ずっと気になっていた本だったんだけど。まず、とても分かりにくい文章だった。部分、部分には興味深い内容があるのだが、留保や「後述」が多くて、脳がこんがらがる。真っ直ぐに「発明」の論証がなされているように読めない。頭の良い学者さんによくあるパターンだろう。とても一般向けに書いたとは思えなかった。明治後期からの文壇の動きに終始していた点も物足りない気がした。個人的には例えば「天皇から庶民まで」が本当なのか、などの疑問にズバリと踏み込んでほしかった。2022/04/03
さとうしん
13
「万葉集は天皇から庶民まであらゆる階層の歌を収めた日本の国民歌集であり、その歌風は素朴で雄渾である」という一般的理解に対し、そうした理解や認識がどのように形成、というよりはどのような背景から「発明」されたかを追う。本書の議論によれば、万葉集、あるいは古典文学は、古典のカバーをかぶせた近代文学ということになるだろうか。最後に古典教育不要論に関する文章が引かれているが、現代に古典を学ぶ意義は近代文学であるという点にありそうである。2019/05/17
takao
2
ふむ2023/02/08
mandaraderluste
1
「創られた伝統」という、それ自体ある意味手垢にまみれた視点ではあるが、「万葉集」という絶対的な古典の神格化過程に光を当てた事は、コロンブスの卵的な新鮮さだった。特に「万葉集」にとどまらず「国文学」の起源までを暴くその筆致は圧巻である。2019/07/05