出版社内容情報
世界には六千もの言語がありますが、そのうちの60%は、次の世紀を待たずして消滅すると危惧されています。全地球的な往来と通信が発達した今、英語など世界の共通語がますます普及し、マイナーな言語が消滅していくのは必然ではないか?と考える人も多いでしょう。しかし、言語の多様性が失われていくのは、環境が破壊され、多くの動植物が絶滅の淵に立たされていることと、根を同じくする現象なのです。言語はどのように誕生し死ぬのか、なぜ、英語などの一握りの言語が、かくも圧倒的に他の言語を駆逐するにいたったのかを、言語と生物を取り巻く環境の保全という視点に立ってわかりやすく述べ、多様性のなかにこそ豊かさが宿ることを説得的に示しています。ことばさえもが均一化していく世界を阻止したいという、著者たちからの緊急メッセージです。
「・・・・・・人々は正当な理由もないのに自分たちの言語を放棄はしないものである。譲歩する以外に現実的な選択肢のない、強要によるストレスがずしりとのしかかる社会状況のもとで生じる言語の変更と死の事例がいかに多いかを、私たちは本書全体にわたって示したいと思う。多くの人々が自分たちの言語を話すのを止めるのは、生き残り戦略としての自己防衛のためなのである。
このことをよく示す事例として、1932年のエル・サルヴァドルの出来事を挙げることができよう。農民暴動が起きてから、服装や身体つきからインディオと見なされた者は軍の兵士によって誰彼かまわず検挙され、そして殺された。その数、約二万五千人におよんだという。三年後になってもラジオ放送や新聞は、二度と暴動が起こらないようエル・サルヴァドルのインディオの根絶を声高に求めていた。(本文「第1章」より)
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【関連書籍】
『 文化的営みとしての発達 』 B・ロゴフ著 (定価5985円 2006)
『 ことば 始まりと進化の謎を解く 』 J・エイチスン著 (定価3990円 1999)
『 本が死ぬところ暴力が生まれる 』 B・サンダース著 (定価2992円 1998)
内容説明
言語の多様性をどう守るか。世界の大部分の言語が、急速に消滅している。生物種の絶滅と軌を一にして。言語はどのようにして死んでゆくのか?われわれに、何ができるのか?均一化するグローバリズムへの警鐘。
目次
第1章 消えた言語はいまどこに?
第2章 多様性の世界
第3章 失われることば/失われる世界
第4章 言語の生態学
第5章 動植物相の波動
第6章 経済の波動
第7章 なぜ、何かをなすべきなのか?
第8章 持続可能な未来
著者等紹介
ネトル,ダニエル[ネトル,ダニエル][Nettle,Daniel]
文化人類学を専攻、アフリカにおける現地調査を経験している
ロメイン,スザンヌ[ロメイン,スザンヌ][Romaine,Suzanne]
専門は言語学、イギリス国内と太平洋諸島における現地調査の経験あり
島村宣男[シマムラノブオ]
1944年埼玉県生まれ。1969年東京外国語大学大学院外国語学研究科ゲルマン系言語(英語学)専攻修了。専攻は英語学(英語史・文体論)。現職、関東学院大学大学院文学研究科・文学部教授
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