出版社内容情報
劇が始まると、アガメムノンの王宮の屋根のうえに物見の男がいる。彼はトロイア落城を知らせる烽火を見つけ歓喜する。やがて王が帰還することも嬉しい。しかし喜びの言葉を口にしたすぐあと男は、この王宮には王の留守中にあからさまにはいえない良からぬことがあったことを匂わす。
アルゴスの長老からなるコロスは、オルケストラに入場しながら、ギリシアの大群がトロイア攻略に出征し、激烈に戦っていることを歌う。この部分には早くも、大神ゼウスは一人の女性のために起きた戦争でギリシア人にもトロイア人にも同じように骨身を削る格闘を与え給うたという一節があって、全体的にこの戦争がトロイアとギリシアの両方にもたらしたものが陰鬱であることを示唆する。(『アガメムノン』より)
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【新 刊】
『 老愚者考 』 クレイグ著/山中康裕監訳 (定価2205円 6月下旬刊行予定)
内容説明
文明がいかに発達しても人間はその能力の限界を自覚せざるを得ない。その限界性故に世界は悲劇に満ちている。二千年以上前のギリシア人は人間を、神々を、そして世界をどのように見ていたのか。アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスの作品のなかに、現代にも通じる人類の英知をさぐる。
目次
序章 人生についての悲劇的感覚―悲劇とはなにか
1 ギリシア悲劇とはなにか
2 アイスキュロス―文明の悲劇
3 ソポクレス―精神の悲劇
4 エウリピデス―激情の悲劇
終章 現代と悲劇的感覚―文明の背理