オーレリア―夢と生

オーレリア―夢と生

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  • サイズ A5判/ページ数 80p/高さ 21X15cm
  • 商品コード 9784783728252
  • NDC分類 953
  • Cコード C0098

内容説明

最愛の女性オーレリアを失った痛手、運命の打撃、狂気と旅浪にさまよう病める魂、人生の極限状況を詩的に探求した幻の遺作の完訳。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

夜間飛行

63
ネルヴァルの夢は夜見る夢ではなく「精霊達の世界」だ。冒頭で喪った愛する女性をオーレリアと名づけた所から始まるあてどのない夢想。彷徨う「私」の前にオーレリアは神々しい姿で現れ、もう一人の「私」に奪い去られる。理性が崩壊していく過程をありの儘に記述する文体はあくまで静謐だ。ネルヴァルの夢はまるで旅のように土地を過ぎ、地霊や祖霊と交感しながら、この世の始源と終末を垣間見る。夢の巨大さ、そして罪の意識と祈りの人間らしさに感動した。日常と薄い膜を隔てたもう一つの生…夢や狂気にこそ、人の人たる栄光があるのではないか。2016/06/04

ヴェネツィア

24
学生時代以来の再読。かつては、この物語世界に地中海的なイメージを抱いていたのだが、今回の再読ではまったく印象が違って、ほの暗いドイツ的な影を強く見ることになった。一世代前のホフマンとの相通を感じるし、メフィストフェレスや『ドン・ジョヴァンニ』、あるいはリヒターといったドイツ的なものが随所にあるからというばかりではない。また、オーレリアとマリアそしてイシスの同一化はきわめて異教的だが、「もはや死んでしまっている」ことにおいて悲劇的でもあるだろう。あるいは、それ故にこそ自らの夢にカバラの秘跡を探すのだろうか。2013/01/05

兎乃

23
なつのさん、ヴェネツィアさん、音蔵さんの素敵な感想に誘発されて再読。「キルヒャーの世界図鑑」と、幻想詩篇を傍らに。入退院を繰り返し、度重なる錯乱発作の中、徹底した冷静さで幻視を書き留める。夢の静寂、現実の喧噪。著者自身の状態が悪化するこの時期に本書オーレリアをはじめとする名著が執筆された。ゲーテの「ファウスト」や諸作品の仏語翻訳、ホフマンの仏語翻訳で脚光を浴び、ゲーテ本人から高い評価を与えられたネルヴァルは、「言葉」の建造物に関してあまりにも真摯で、極限状態まで「言葉」に取り組んだのだと思う。2013/01/24

fishdeleuze

12
目を覚ましながら見る夢が現実へ流出し二重の相をとる。大きくなったり小さくなったり、高くそして低く、輝く光と闇との混淆。幻視。幻視に飲み込まれているにもかかわらず静かに保たれている筆致。そのしずかな筆致の合間にオカルティズムと妄想による表現が挟まれる。恍惚を憶えては覚めというある種波のような不思議なリズムがある。幻想的な詩のようでもあり、幻覚を冷徹に記した記録のようでもある。美しく哀しい。2012/12/04

無能なガラス屋

3
「想像力は無限の喜びをもたらしてくれた。いわゆる理性と称するものをしばらく失くしていたとしても、それをまたとりもどしたなら、何だろう?」「現実生活への夢の流出とでも呼びたいものがこのときからはじまった。そのときから、あらゆるものがときとして二重の相をとりはじめた。-しかし、判断力が論理性を欠くことはなかった。身の上にふりかかったことなら、どんなことも記憶から抜け落ちることもなかった。ただ、行動だけが狂った外見を呈し、人間の理性が幻覚と呼ぶところのものに従っていた......」2022/12/14

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